歌舞伎狂言。お家物。3幕。作者不詳。1698年(元禄11)正月,京の早雲座(山下半左衛門座)初演。小笹巴之丞を中村七三郎,傾城奥州を岩井左源太,家老和田右衛門を山下半左衛門,傾城三浦を芳沢あやめほか。京東山における浅間明神の開帳を当て込んだ作品。1幕目,禿(かむろ)が持っていた奥州の起請を火にくべると,煙の中から奥州の姿が現れ口説(くぜつ)を述べる場面が,のちに影響作として書き替えられた〈浅間物〉の特徴となる。2幕目は,巴之丞の遊興の犠牲になって遊里に身を沈めた家老和田右衛門の女房三浦,その三浦に会いにきて言い寄る巴之丞,巴之丞の愛人奥州,この3人の関係と複雑な心情を〈独り碁〉や〈草履打〉の趣向などを使って見せ場を組み立てている。3幕目は殺された和田右衛門と三浦の子も普賢菩薩の御利生で助かり,めでたしで終わる。巴之丞に扮した七三郎は,江戸の二枚目役者で,やつしの名人と称された坂田藤十郎の本拠地での上演であったが,好評で120日の続演となった。七三郎の人気も認められるが,その後も巴之丞・和田右衛門・三浦・奥州の4役に名優がそろうと,たびたび上演されており,作品内容の点からも上方における元禄期の歌舞伎の代表作との評に価する。七三郎は江戸に帰って後,1700年山村座で同じ外題の狂言を上演。内容はやや異なる。また,早雲座上演のものの,第2・3幕を浄瑠璃にした富松薩摩の同外題の曲がある。
→浅間物
執筆者:鳥越 文蔵
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…名曲として名高い。(5)《傾城浅間嶽》。一中節。…
…開帳は,江戸時代には諸芸能の興行の場であり,庶民の娯楽の場でもあった。宗祖の事跡や縁起を説くことの多い古浄瑠璃はもちろん,享楽的な元禄歌舞伎においても,《仏母摩耶山開帳(ぶつもまやさんかいちよう)》など題名に明示したものもあり,著名な《傾城浅間嶽(けいせいあさまがたけ)》も浅間嶽普賢菩薩の京都出開帳を当て込んでいる。開帳の触れ,開帳仏の奇瑞,開帳の法会は,それぞれ雄弁術,からくり,舞踊といった見せ場をつくり,戯曲構成にも絡んでいる。…
…荒事の雄である初世市川団十郎とは両極の芸域を有して相並ぶ名優である。98年(元禄11)上京して演じた《傾城浅間嶽》の巴之丞では,傾城事のうまさで,元祖坂田藤十郎を驚かせたという。また江戸の曾我狂言にあって十郎役を和事の風でした最初が七三郎であり,団十郎の五郎,伝九郎の朝比奈とともに後世の典範を作ったといわれる。…
※「傾城浅間嶽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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