開帳(読み)カイチョウ

デジタル大辞泉 「開帳」の意味・読み・例文・類語

かい‐ちょう〔‐チヤウ〕【開帳】

[名](スル)
ふだんは閉じてある厨子ずしの扉を、特定日に限って開き、中の秘仏を一般の人に拝ませること。開龕かいがん啓龕けいがん開扉かいひ 春》「―の破れ鐘つくや深山寺/蛇笏
隠すべきものを人目にさらすこと。
賭博とばくの座を開くこと。
[補説]3は、法律では「開張」と書く。

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精選版 日本国語大辞典 「開帳」の意味・読み・例文・類語

かい‐ちょう‥チャウ【開帳】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 寺院で、ふだん公開しない仏像などを何年間隔かで一定の日を限って、参詣人拝観させること。また、寺院の厨子(ずし)を開いて秘仏を特定の日だけ一般人に拝ませること。開龕(かいがん)。啓龕(けいがん)開扉(かいひ)。《 季語・春 》 〔大乗院寺社雑事記‐宝徳三年(1451)一二月一八日〕
    1. [初出の実例]「爰に石山寺の開帳とて、都人袖をつらね」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)三)
    2. [その他の文献]〔旧雑譬喩経‐上〕
  3. 隠しているものを衆人の目にさらすこと。特に、女陰を人に見せることをいうことが多い。
    1. [初出の実例]「ちっとの間今のが百の開帳か」(出典:雑俳・絹はかま(1701))
    2. 「あを向けにどっさりと、どこも彼処(かしこ)真向きの開帳(カイチャウ)」(出典:歌舞伎・児雷也豪傑譚話(1852)二幕)
  4. かいちょう(開張)

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改訂新版 世界大百科事典 「開帳」の意味・わかりやすい解説

開帳 (かいちょう)

秘仏の帳(とばり)を開いて一般信者に拝観・結縁(けちえん)させること。京都では鎌倉時代からその例が見られ,江戸時代には全国に普及するが,三都のうちとくに人口の多い江戸での開帳が質量ともにぬきんでることになった。開帳は,江戸では寺社奉行所,天領や諸藩ではそれぞれの役所の許可を受けて行うことに定められていた。本来,仏と衆生(しゆじよう)の結縁を目的とする宗教行事であるが,後には堂社の修復などの臨時出費を賄うための募財事業として,33年に1回の年限より短い周期で実施されることも少なくなかった。信者は講の組織によってこれに参加したが,一般民衆にとって開帳は信心より行楽の対象でもあった。香具師(やし)や商人たちは開帳寺社の境内や付近の盛場に,見世物小屋,飲食店などを設けて参詣人の散財を誘った。開帳の開催期間は60日間が普通だったが,これより短期のものも,日延べをして80~100日に及ぶものもあった。有名寺社の場合は膨大な人数を動員できたので,これを当て込む芝居興行,草双紙の出版,際物(きわもの)商品の販売なども盛んで,居開帳の場合は門前町も潤うなど種々のご利益があった。開帳には,自坊で行う居開帳と,他の場所で行う出開帳とがあった。江戸の場合,居開帳では浅草寺観音を筆頭に江の島弁天,護国寺観音,亀戸天神,洲崎弁天など,出開帳では成田不動,嵯峨清凉寺の釈迦,信州善光寺如来,甲州身延山祖師が四天王と称されて人気があった。出開帳場所としては,本所回向院(えこういん),深川永代寺,湯島天神,深川浄心寺などがおもな所で,とくに回向院は近くに両国広小路の盛場をひかえ,絶好の出開帳場所として繁盛した。開帳の最盛期は田沼時代を中心とする約50年間で,寛政以後しだいに衰え,天保改革以後はとくに出開帳は激減した。明治以後も格式を守る寺院では継承され,出開帳も主として大都市の博物館や百貨店などで寺宝展の形で行われることもあるが,期間も短く江戸時代の盛況には遠く及ばない。
執筆者:

歌舞伎狂言,人形浄瑠璃の作品群の一つ。寺院の開帳を当て込んだもの。開帳は,江戸時代には諸芸能の興行の場であり,庶民の娯楽の場でもあった。宗祖の事跡や縁起を説くことの多い古浄瑠璃はもちろん,享楽的な元禄歌舞伎においても,《仏母摩耶山開帳(ぶつもまやさんかいちよう)》など題名に明示したものもあり,著名な《傾城浅間嶽(けいせいあさまがたけ)》も浅間嶽普賢菩薩の京都出開帳を当て込んでいる。開帳の触れ,開帳仏の奇瑞,開帳の法会は,それぞれ雄弁術,からくり,舞踊といった見せ場をつくり,戯曲構成にも絡んでいる。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「開帳」の意味・わかりやすい解説

開帳【かいちょう】

秘仏の帳(とばり)を開いて拝観させること。自坊で行う居開帳と,他の場所で行う出開帳があった。本来,仏と信者の結縁を目的とする宗教行事であったが,のち堂舎修復などの費用を賄うための募財事業として実施されることが多かった。鎌倉時代から例があるが,江戸時代には全国に普及,特に江戸での開帳(居開帳の浅草(せんそう)寺観音・亀戸(かめいど)天神や,出開帳の新勝寺・信州善光(ぜんこう)寺如来など)には多くの人々が集まり,開帳場所では見世物小屋・飲食店,また芝居などが興行された。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「開帳」の解説

開帳
かいちょう

開扉(かいひ)・啓龕(けいがん)・開龕(かいがん)とも。厨子(ずし)の扉や斗帳(とばり)を開き,内に安置した非公開の本尊や祖師像などの尊像・秘宝をじかに拝観させること。寺社境内で行う場合を居(い)開帳,他所に出張して行うことを出(で)開帳という。もとは結縁(けちえん)のためだったが,寺社の修造費・経営費を獲得する目的となり,拝観のとき奉納する金銭を開帳銭といった。最も盛んになった江戸時代には娯楽化・興行化の傾向が強まった。開帳を行う開帳場には歌舞伎や人形浄瑠璃の見世物小屋や茶店などがでて盛り場となり,戯曲やからくりのなかには開帳をあてこんで作られた開帳物とよばれる作品がうまれた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「開帳」の意味・わかりやすい解説

開帳
かいちょう

開扉 (かいひ) ともいう。厨子 (ずし) の扉を開いて,尊像を一般の人々に礼拝させること。一般に秘仏の開帳を3,7,10,12,20,30,50,60年目などに周期的に行なって法要供養することが行われている。

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