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浅間物 あさまもの

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

浅間物
あさまもの

邦楽曲の分類用語。歌舞伎舞踊および伴奏の浄瑠璃などの一系列。元禄 11 (1698) 年京都山下座初演,同 13年江戸山村座再演の芝居『傾城浅間嶽 (けいせいあさまがたけ) 』の一場面を原拠とし,その場の反魂香 (はんごんこう) の趣向すなわち,起請文,誓紙,その他の物を燃やすとその煙の中から愛人の霊が姿を現すという趣向を取入れた曲の総称。多くは1幕物の舞踊曲で,江戸で流行した。人物,燃やす物,筋立ては曲により異なる。
(1) 地歌『浅間』 上記の芝居の一節,遊女奥州の生霊の口説の部分。
(2) 一中節『夕霞浅間嶽』 略称『夕霞』『浅間』。原武太夫作曲。享保 19 (1734) 年江戸中村座初演。
(3) 一中節『家桜傾城姿』 略称『家桜』。津打九平次作詞,都千中作曲。元文1 (36) 年中村座初演。
(4) 豊後節『朝霞陽炎姿』 宮古路豊後掾の語り。近松門左衛門作の義太夫節『けいせい反魂香』の一部。元文5 (40) 年大坂大西芝居初演。
(5) 一中節『浅間嶽姿の起請』 延享1 (44) 年大坂大西芝居初演。
(6) 河東節『恋桜反魂香』 略称『反魂香』。中村清三郎作詞,山彦源四郎作曲。宝暦1 (51) 年中村座初演。
(7) 常磐津節『留袖浅間嶽』 並木良輔作詞。明和1 (64) 年江戸市村座初演。
(8) 富本節『其俤 (そのおもかげ) 浅間嶽』 略称『浅間』。増山金八作詞,名見崎徳治作曲。安永8 (79) 年市村座初演。
(9) 一中節『傾城浅間嶽』 1世桜田治助作詞,鳥羽屋里長作曲。寛政4 (92) 年中村座初演。
(10) 常磐津節『初桜浅間嶽』 略称『初桜』。増山金八作詞,岸沢古式部作曲。寛政9 (97) 年江戸都座初演。
(11) 清元節『初霞浅間嶽』 略称『初霞』。詞,曲ともに (8) の借用。天保5 (1834) 年市村座初演。
以上各曲の舞踊はすべて廃絶,(4) (5) (7) は曲も廃絶。

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世界大百科事典 第2版の解説

あさまもの【浅間物】

歌舞伎舞踊の一系統。1698年(元禄11)2月,京都の東山で信州浅間明神の開帳があった。これを当て込んで諏訪家のお家騒動を背景とし,終局に東山開帳の場を配した《けいせい浅間嶽》が京都布袋屋座で上演された。作者は中村七三郎(一説には近松門左衛門とも中村伝七とも)で,その七三郎が主役の小笹巴之丞を演じて好評を得た。このなかで巴之丞が持っていた傾城逢州の起請文を火鉢で焼くとその煙の中から逢州の姿が現れ〈胸の炎は夜に三度,此方(こち)の思いは日に三度,煙くらべん浅間山,あれごらんぜよあさましや〉といった小唄を使って巴之丞に恨みをのべた。

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大辞林 第三版の解説

あさまもの【浅間物】

1698年初演の「傾城浅間嶽けいせいあさまがたけ」を原拠とする歌舞伎・浄瑠璃・舞踊の一群。巴之丞が傾城の奥州ととりかわした起請文を焼くと、その煙の中から奥州の姿が現れるという趣向をもつ。

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世界大百科事典内の浅間物の言及

【傾城浅間嶽】より

…京東山における浅間明神の開帳を当て込んだ作品。1幕目,禿(かむろ)が持っていた奥州の起請を火にくべると,煙の中から奥州の姿が現れ口説(くぜつ)を述べる場面が,のちに影響作として書き替えられた〈浅間物〉の特徴となる。2幕目は,巴之丞の遊興の犠牲になって遊里に身を沈めた家老和田右衛門の女房三浦,その三浦に会いにきて言い寄る巴之丞,巴之丞の愛人奥州,この3人の関係と複雑な心情を〈独り碁〉や〈草履打〉の趣向などを使って見せ場を組み立てている。…

【曾我綉俠御所染】より

…五郎蔵宅でさつきは因果を語りともに自害する。柳亭種彦の読本《浅間嶽面影草紙》に拠った作(浅間物)。初演時には,二幕目雪中に重宝を争う岩木山だんまり,三幕目時鳥殺し,大詰五郎蔵が切腹してから尺八を吹き,さつきが胡弓をとって合奏しつつ死んでいく場などが好評だったというが,近年では怪異趣味に満ちた前半の時代狂言は省かれ,五幕目五条坂出会い,縁切,逢州殺しの3場だけ上演される例が多い。…

※「浅間物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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