(読み)ナ

デジタル大辞泉 「儺」の意味・読み・例文・類語

な【×儺】

疫鬼を追い払う行事追儺ついな鬼遣らい
晦日つごもりの日になりて、―といふもの試みるを」〈かげろふ・上〉

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精選版 日本国語大辞典 「儺」の意味・読み・例文・類語

な【儺】

  1. 〘 名詞 〙 疫鬼を追い払うこと。また、年中行事一つで、大晦日の夜、疫鬼を追い払うための儀式中国風習日本に伝わったもので、中国では三月・八月・一二月の三回行なったという。日本では慶雲三年(七〇六)一二月初めて行なわれた。追儺(ついな)。おにやらい。
    1. [初出の実例]「訖方相先作儺声即以戈撃楯如此三遍、群臣相承和呼以逐悪鬼、各出四門〈略〉至宮城門外」(出典内裏式(833)十二月大儺式)
    2. 「しはすつごもりがたに〈略〉つごもりの日になりて、なといふ物心みるを」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)

だ【儺】

  1. 〘 名詞 〙 悪鬼を追い払う儀式。おにやらい。→儺(な)。〔論語郷党

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普及版 字通 「儺」の読み・字形・画数・意味


21画

[字音] ダ・ナ
[字訓] おにやらい・おだやか

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(難)(なん)。(だ)(の省声)の声がある。〔説文〕八上に「行くにるなり」(段注本)とするのは、〔詩、衛風、竹竿〕「巧笑の瑳(さ)たる 佩玉の儺たる」の〔伝〕に「儺とは、行くにるなり」とあるのによる。〔段注〕にそれを字の本義とするが、それは阿儺(あだ)・猗儺(いだ)などの形况の連語に用いるときの用義である。〔論語、郷党〕「人儺す」、〔周礼、春官、占夢〕「(だ)(儺)して毆疫(おうえき)す」とは、季節の移るときなどに鬼やらい、あるいは修祓することをいう。儺とはこの儺疫を本義とする字である。墓道で行う道上祭を(しよう)といい、また儺ともいう。

[訓義]
1. おにやらい、除疫。
2. おだやか、たおやか、しずかに歩むさま。

[古辞書の訓]
名義抄〕儺 オニヤラヒ・オニヤラフ・タタヤラフ・ナ 〔立〕儺 ツツキ・オモヤクハス・タミヤラヒ・オニヤラヒ・ナホヤラヒ・オニ

[語系]
儺・naは同声。は〔説文〕九上に「鬼を見てく詞なり」とあり、〔段注〕に「奈何」の合声であるとする。おそらく儺の異文で、鬼を見て驚くよりも、鬼を驚かせるかけ声であろう。

[熟語]
儺禦儺鼓儺神・儺声儺儺儺逐儺舞・儺祓・儺礼
[下接語]
猗儺・郷儺・駆儺・行儺・興儺・歳儺・時儺・春儺・贈儺・追儺

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【追儺】より

…大晦日の大祓(おおはらえ)についで行われた。大儺(たいな),鬼やらいともいう。古く中国に始まり,《周礼(しゆらい)》によれば方相氏(ほうそうし∥ほうしようし)と称する呪師が熊の皮をかぶり,四つの黄金の目玉のある面をつけ,黒衣に朱の裳(も)をつけ,手に戈(ほこ)と盾(たて)とをもって疫鬼を追い出した。…

※「儺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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