八宗綱要(読み)ハッシュウコウヨウ

デジタル大辞泉 「八宗綱要」の意味・読み・例文・類語

はっしゅうこうよう〔ハツシユウカウエウ〕【八宗綱要】

鎌倉時代仏教書。2巻。凝然ぎょうねん著。文永5年(1268)成立仏法が伝播した歴史を述べ、八宗の歴史や教理を解説したもの。古来初学者の入門書とされる。

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精選版 日本国語大辞典 「八宗綱要」の意味・読み・例文・類語

はっしゅうこうよう‥カウエウ【八宗綱要】

  1. 鎌倉時代の仏教書。二巻。凝然著。文永五年(一二六八)成立。八宗について、その歴史と教義を要約したもの。禅宗浄土宗紹介付記。古来、仏教への入門書として尊ばれる。

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改訂新版 世界大百科事典 「八宗綱要」の意味・わかりやすい解説

八宗綱要 (はっしゅうこうよう)

東大寺戒壇院の学僧凝然(ぎようねん)が,1268年(文永5)1月,故郷の伊予国円明寺で,日本の八宗について概説した著作。上下2巻よりなる。序説として,仏教の法門は大小の2乗,声聞・菩薩の2蔵,経・律・論の3蔵に大別できることを述べ,仏法の日本への伝来について概説し,以下日本の八宗の各論に触れ,各宗の歴史・教理について解説している。上巻は序説と俱舎(くしや)宗,成実(じようじつ)宗,律宗の3宗,下巻は法相(ほつそう)宗,三論宗天台宗華厳宗真言宗の5宗について解説し,最後に禅宗,浄土宗を簡単に紹介している。八宗に関する歴史とその変遷や教理を簡潔に示している点で,古くより仏教入門書として重視された。16世紀後半以降数度重刊され,また注釈・解説書の類も50書に達する。仏教を総合的に考察しようとする凝然の学風は,後年一段と研鑽され,各宗にわたる莫大な著作となった。本書は《三国仏法伝通縁起》《浄土法門源流章》《律宗綱要》などとともに,凝然の史家としての一面を示すものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「八宗綱要」の意味・わかりやすい解説

八宗綱要
はっしゅうこうよう

仏教の概論書。2巻。日本華厳(けごん)宗の学僧、東大寺の凝然(ぎょうねん)(1240―1321)の29歳のときの著。インド、中国、日本の三国にわたる、大小乗、密教に及ぶ全仏教を網羅する概説書として、今日でも一般に広く読まれている。八宗とは、倶舎(くしゃ)宗、成実(じょうじつ)宗、律(りつ)宗、法相(ほっそう)宗、三論(さんろん)宗、華厳(けごん)宗、天台宗、真言(しんごん)宗で、それら八宗の宗名、成立、教説を概説する。うち、倶舎、成実、律、法相、三論、華厳は南都六宗である。これに、平安仏教の、最澄(さいちょう)の天台宗と、空海の真言宗の二宗を加えている。歴史的には倶舎は法相の、成実は三論の付宗とされ、基礎学として併修され独立した宗ではなかった。最後に禅宗、浄土宗についての簡単な付記があるが、当時盛行した浄土宗や禅宗が凝然の意識に大きくなかったことは注目すべきである。

[池田魯參]

『平川彰訳注『八宗綱要』上下(1980・大蔵出版)』『鎌田茂雄訳注『八宗綱要』(講談社学術文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八宗綱要」の意味・わかりやすい解説

八宗綱要
はっしゅうこうよう

鎌倉時代の東大寺僧凝然 (1240~1321) の著書。2巻。文永5 (1268) 年撰述。釈尊の教えがインドに発し,日本にまで伝達された歴史を簡略に述べ,倶舎宗,成実宗,律宗,法相宗,三論宗,天台宗,華厳宗,真言宗,禅宗,浄土宗の歴史と教理とを,要点を摘出しながら簡潔に記したもの。

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