成実宗(読み)じょうじつしゅう(英語表記)Cheng-shi-zong

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

成実宗
じょうじつしゅう
Cheng-shi-zong

鳩摩羅什 (くまらじゅう) が訳出した『成実論』に基づく中国仏教の一宗派。一切皆空と観じることによって涅槃に到達しようとする。羅什の弟子僧叡らは,いちはやくこれを講じたが,のち南北朝時代に最も盛んになり,法雲智蔵,僧などの傑僧を輩出した。しかし三論の研究が次第に盛んになり,吉蔵によって部派仏教であることを決定されてからは次第に『成実論』の研究は衰えた。日本では,三論とともに東大寺,法隆寺などで研究されたが,『成実論』研究自体は,次第に影を没した。

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大辞林 第三版の解説

じょうじつしゅう【成実宗】

南都六宗・中国一三宗の一。「成実論」に依拠し、これを研究する学派。五世紀初めの僧叡そうえい・僧導らに始まる。唐代に衰微。日本では一つの宗派を形成するまでに至らず、三論宗に付随して学ばれたが、平安以降さらに無視されるようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

成実宗
じょうじつしゅう

『成実論』をよりどころとする仏教の一宗派。日本の南都六宗の一つ。『成実論』は3~4世紀ごろのインドの仏教学者、訶梨跋摩(かりばつま)(ハリバルマンHarivarman)の作で、部派仏教(小乗仏教)の教理に大乗的趣旨を加味した仏教概説書である。412年に鳩摩羅什(くまらじゅう)が漢訳し、鳩摩羅什門下の人々、とくに僧導(そうどう)や僧嵩(そうすう)によって宣揚され、中国の南北両地に流布し、その研究は梁(りょう)代にもっとも隆盛となった。成実論師・成実師などの呼称もおこり学派を形成したが、仏教学の進展とともに小乗仏教と批判され、唐代以後は研究も衰退した。
 日本への伝来は、凝然(ぎょうねん)の『三国仏法伝通縁起(さんごくぶっぽうでんずうえんぎ)』などにより推察すると、推古(すいこ)天皇の代には伝えられたと考えられる。初めは高麗(こま)や百済(くだら)の渡来僧によって講讃(こうさん)され、成実衆として一つの学団を形成し、東大寺建立(752)のころには南都六宗の一とされた。平安時代になって三論宗の付宗とされ、研究者も減少し、一宗としての独立性を失った。教義の中心は、仏教の基本教義とされる、苦の現実(苦諦(くたい))と苦の原因(集諦(じったい))と苦の滅(滅諦(めったい))と苦の滅への道(道諦(どうたい))との四諦(したい)の真実義を明らかにすることにあり、現象世界を構成する要素を、物質的なものや認識・心理作用など5類84種に分類して説明し、修行の階位を分けて27の賢聖(げんじょう)をたてるなど部派仏教の特徴を示す。また、自我という実体を認めない(我空・人空)とともに客観世界も空である(法空)と説き、世俗諦(せぞくたい)と第一義諦との二諦(にたい)説や中道を強調するなど大乗的な教えも説いた。[伊藤隆寿]
『福原亮厳著『仏教諸派の学術批判・成実論の研究』(1969・永田文昌堂)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

じょうじつ‐しゅう ジャウジツ‥【成実宗】

〘名〙 仏語。仏教の一派で、南都六宗、中国一三宗の一つ。訶梨跋摩(かりばつま)の著わした「成実論」に基づき、万物はすべて空(くう)であり、無であることを悟ることによって、煩悩(ぼんのう)を解脱することができるとの教義を研究する学派。中国では、後秦の義熙七~八年(四一一‐四一二)、鳩摩羅什(くまらじゅう)が漢訳し、弟子の僧叡がそれを説教したのに始まり、その研究は初唐まで隆盛をきわめた。日本では三論宗とともに伝えられ、東大寺、元興寺、大安寺、西大寺などで三論と兼学されたが、南都六宗の一つに数えられながら独立の教団として扱われていない。成実。〔三国仏法伝通縁起(1311)〕
※歩船鈔(1362)末「成実宗は倶舎と同じく三乗の道位をあかす」

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世界大百科事典内の成実宗の言及

【南都六宗】より

…奈良六宗ともいう。8世紀に官大寺などで研究されていた三論宗,成実(じようじつ)宗,法相(ほつそう)宗俱舎(くしや)宗華厳(けごん)宗律宗の六宗を指す。六宗の成立以前に華厳宗を除く五宗が成立していたことは,718年(養老2)10月の太政官符に〈五宗の学,三蔵の教〉とあることからもうかがわれ,藤原氏祖先の伝記である《家伝》(鎌足伝)も藤原鎌足が飛鳥元興(がんごう)寺に五宗の研究の費用を寄付したと伝えている。…

※「成実宗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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