古流(こりゅう)馬術の一つ。大坪、小笠原(おがさわら)、内藤の諸流とともに、古流四流といわれる。流祖は大永(たいえい)~天文(てんぶん)ころ(1521~55)に活躍した八条近江守房繁(おうみのかみふさしげ)。房繁は関東管領(かんれい)上杉氏の所領であった武蔵(むさし)国八条領(埼玉県南埼玉郡)の出身と伝え、初め小笠原民部少輔(しょう)植盛(うえもり)について甲斐(かい)源氏伝来の馬芸を学び、さらに自己の創意工夫を加えて一流を始め、馬術中興以来の名人といわれた。房繁の弟兵部大輔(ひょうぶだゆう)房隆(ふさたか)および子の六郎朝繁(ろくろうともしげ)もともに芸の精妙をうたわれ、この一門に遊ぶ者が多かったという。越えて近世の初頭、元和(げんな)・寛永(かんえい)年間(1615~44)には直系を継いだ荒川長兵衛重世(ちょうべえしげよ)はその妙技を称せられて流名を高め、尾張(おわり)の徳川義直(よしなお)に召し出されて御厩(おうまや)別当となった細野篠兵衛(しのべえ)(号一雲(いちうん))、水戸の徳川頼房(よりふさ)に仕え、のち新八条流の祖となった関口八郎右衛門(せきぐちはちろうえもん)信重(のぶしげ)などを輩出した。また地方諸藩のうち仙台藩の八条流も有名で、高麗(こうらい)流八条家馬術を称した岩淵(いわぶち)家および及川(おいかわ)、草苅(くさかり)の三家が同藩の馬術師範家を独占的に世襲していた。
[渡邉一郎]
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