日本大百科全書(ニッポニカ) 「公共広告」の意味・わかりやすい解説
公共広告
こうきょうこうこく
public advertising
企業や団体が、広告のもつ強力な訴求力や説得力を利用して、公共の福祉や社会改革のため、あるいは緊急な社会問題解決のため、公共機関や民間組織が市民に理解と参加を呼びかけて展開する広告コミュニケーション活動をいう。テレビや新聞を主な媒体として使用することが多いが、単に商業ベースにおける利益追求の一環として行う通常の広告とは相違する。広告が国民生活のなかに定着するにつれ、その社会的責任の重要性がクローズアップされるようになり、公共広告は生まれたのである。
公共広告の先進国アメリカでは、1942年に戦時広告評議会が設立され、戦後この組織を引き継ぐかたちで広告協議会Advertising Council(略称AC)が発足し、連邦政府や各種NPOと組んでさまざまな社会的キャンペーン活動を展開し、今日に至っている。
日本においては1970年(昭和45)の大阪での日本万国博覧会を契機に、公共広告推進組織の設立機運が高まり、アメリカのACをモデルケースとして関西公共広告機構が発足した。1974年に全国組織の社団法人公共広告機構となり、1977年には東京にも本部を設置している。なお、2009年(平成21)7月に、団体名をACジャパンAdvertising Council Japanと改称し、2011年には公益社団法人となった。
広告を取り扱う会員企業が資金を出し、媒体は紙面や時間を無償または割安な料金で提供し、広告会社はアイデアや制作費を負担するという、政府や行政機関とは一線を画した立場からの仕組みとなっており、会員社数は2009年3月末時点で1204社を数える。その精神はACと同じく、広告というコミュニケーション機能を通じて、国民のひとりひとりに相互連帯と自立を訴え、公共的・社会的問題を解決していこうとするものである。公共広告機構は発足以来、その時代に克服すべき国民的課題をテーマにした広告キャンペーンを展開してきている。広告キャンペーンは、「全国キャンペーン」「地域キャンペーン」「支援キャンペーン」からなり、震災など突発的な緊急の社会問題が発生しない限り、通常毎年7月に更新され、翌年6月までの1年間にわたって実施される。その内容は、資源や環境問題、食糧問題、福祉や健康問題、教育や公共マナー、薬物問題、いじめや家庭問題、人権や一般常識など身近な問題から国際理解に至る幅広い領域に及んでいる。
[伊藤誠二]