改訂新版 世界大百科事典 「公共部門」の意味・わかりやすい解説
公共部門 (こうきょうぶもん)
public sector
現代の経済においては,政府を中心とする公共部門(〈民間部門〉に対する言葉)が重要な役割を果たしている。市場機構に頼る市場経済が量的に大きな比重を占めるにしても,市場機構を制度として維持するには政府の役割が最小限不可欠である。現代社会の公共部門は,このような最小限の役割をこえて多様な活動を行い,量的比重はけっして小さくない。しかし具体的に公共部門がどの範囲を指すかは,それほどはっきりしていない。日本の国民所得統計の分類では,電源開発株式会社は公共部門に,日本航空株式会社は民間企業に分類されるという線の引き方がされている。いま政府固有の活動から出発して眺めてみると,まず中央政府(国)の経済活動として政府活動(一般会計)があり,次に公的企業(公企業)がある。前者は,公共財と呼ばれるサービス提供と,公共投資,振替支出から構成されている。後者には特別会計に含まれる事業会計や公社などが含まれる。地方政府に関してもほぼ同じような分類がなされうる。政府部門という言葉は,公共部門と同じ意味に使われるときもあるが,狭く限定して公的企業を除く政府活動を指すことが多い。公共部門が経済全体に占める比重は,国民総生産GNPに対する政府総支出(移転支出を含む)の比率で示すことができる。
執筆者:貝塚 啓明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報