内侍宣(読み)ナイシセン

デジタル大辞泉 「内侍宣」の意味・読み・例文・類語

ないし‐せん【内侍宣】

平安時代勾当内侍こうとうのないし勅命を奉じて宣した文書内宣。だいしせん。

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精選版 日本国語大辞典 「内侍宣」の意味・読み・例文・類語

ないし‐せん【内侍宣】

  1. 〘 名詞 〙 主に平安時代、後宮の内侍司の女官が天皇の勅を承って太政官上卿(しょうけい)検非違使伝宣する宣旨。検非違使に対しては上卿を経ないで、直ちに下される。奈良時代から、内侍より上卿に口頭勅旨を伝宣していたが、これを受ける側が確認や再伝達のために文書を作成するようになった。様式は平安初期は通常「内侍宣」または「被内侍宣偁」と書き出し、中期以後は「典侍何某宣」で書き出す。漢文体であるが、宣命体のものもある。だいしせん。内宣。
    1. [初出の実例]「内侍宣、有勅、進奏之紙、麁悪者多。自今以後、簡清好者」(出典類聚符宣抄‐六・延暦九年(790)五月一四日)

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改訂新版 世界大百科事典 「内侍宣」の意味・わかりやすい解説

内侍宣 (ないしせん)

平安時代,天皇勅命の伝達手段の一つ。(1)内侍司(ないしのつかさ)の女官が勅命を担当官に口頭で伝宣すること,またはその内容。(2)内侍司の女官の口頭伝宣の内容をうけたものがこれを紙上に書きとどめた覚書,またはこれを転用して当事者に与えた文書。内侍司は天皇に供奉し奏請・宣伝を職掌としていたが,これら内侍の当番のものが,太政官の上卿をはじめとする関係官人に勅旨を伝えた。9世紀初め蔵人所の設置に伴い,内侍の奏請・宣伝機能は蔵人所に吸収されるが,検非違使(けびいし)庁への勅旨の伝宣はなお内侍から伝えさせる形式をとった(実際は蔵人が伝宣する)。この際,検非違使官人は,内侍の伝宣の内容を宣旨形式の覚書に書きとどめ,これを関係者に便宜的に与えるが,これを文書としての内侍宣という。口頭伝宣としての内侍宣は,内侍の口から発するものであるが,文書としての内侍宣は内侍の手になるものではなく,その口頭伝宣をうけたものが書く文書である。文書としての内侍宣は,《朝野群載》や《類聚符宣抄》に収録されたものだけで,原本は一つも伝存していない。《続日本後紀》等に引く宣命(せんみよう)体の内侍宣は,口頭伝宣の内侍宣であって,文書としての内侍宣は,すべて漢文体である。
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世界大百科事典(旧版)内の内侍宣の言及

【公家様文書】より

…その淵源は二つに分けられる。一つは奈良時代に,仰せ,命令の意で広く用いられていた宣の系譜を引く内侍宣(ないしせん),宣旨(せんじ),口宣案(くぜんあん),官宣旨(弁官下文),国司庁宣,大府宣などである。内侍宣は,天皇に近侍して奏宣をつかさどる内侍司の女官が天皇の仰せを伝えるものであるが,薬子の変を機に蔵人所が置かれ(810),蔵人が天皇の仰せを,太政官の上卿に伝えるようになった。…

※「内侍宣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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