PZTともいう。天文緯度と恒星時の観測専用望遠鏡の一種。1911年アメリカのロスF.E.Ross(1874-1966)によって原型が作られ,アメリカ海軍天文台で改良が重ねられた。鏡筒は直立して動かない。対物レンズ(口径20~25cm)の下,焦点距離の半分のところに水銀盤を置き,その面上で反射された星の光が,対物レンズの下にある写真乾板上に結像するようにしてある対物レンズと乾板は頭部回転装置によって回転する。星の像を1点に保つため,露出時間中,乾板は西から東へ動かされる。正確に等しい時間間隔をおいて4回露出し,各露出の間に,レンズと乾板はともに180度回転する。星の写った位置と乾板移動に連動した電気接点の時計信号により,星の子午線通過時刻が測定される。乾板上の星像の距離を測定して天文緯度および通過時刻と組み合わせて恒星時が求められる。天頂付近を通過する星のみ観測するので,天文屈折に影響されない利点はあるが,位置のよく決まっていない微光星しか観測できない。
執筆者:若生 康二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
天頂付近における恒星の子午線通過を、写真方式によって観測し、時刻の決定、緯度変化の測定などを行うための装置。英語名photographic zenith tubeの頭文字から「PZT」ともよばれる。恒星位置を可視光によって地上から観測する装置としては、アストロラーベ、子午環と並んでもっとも高い精度を有する。構造は、鉛直上方を向いて固定されたレンズと、その下方の水銀反射面、およびレンズ直下の小さな写真乾板からなる。水銀面により自動水準が行われるため、気泡管のような水準器が不要であること、写真乾板がレンズの節面に置かれるため、光学系の傾きなどによる像の移動がおこらないこと、観測中は眼視を必要としないため自動観測が可能であること、などにより高精度が達成された。
観測目的は当初は、不正確な時計を天測によって正確に保持するための時刻観測機であったが、原子時計の発明により、その目的は「緯度変化」を含めた「地球自転変動」の観測という意味をもつようになった。ところが1980年代からは、超長基線電波干渉計(VLBI)による地球自転観測が高精度で行われるようになり、現在ではPZT観測は行われていない。
[中嶋浩一]
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