写真天頂筒(読み)しゃしんてんちょうとう

精選版 日本国語大辞典 「写真天頂筒」の意味・読み・例文・類語

しゃしん‐てんちょうとう ‥テンチャウトウ【写真天頂筒】

〘名〙 天頂を通る星を自動的に撮影し、時刻緯度を測定する写真望遠鏡。PZT。

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デジタル大辞泉 「写真天頂筒」の意味・読み・例文・類語

しゃしん‐てんちょうとう〔‐テンチヤウトウ〕【写真天頂筒】

天頂付近を通過する恒星を写真によって観測し、時刻と緯度を測定する特殊な望遠鏡。筒は鉛直に固定してあり、水平に180度回転できるレンズ水銀反射盤・写真乾板からなる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「写真天頂筒」の意味・わかりやすい解説

写真天頂筒
しゃしんてんちょうとう

天頂付近における恒星の子午線通過を、写真方式によって観測し、時刻の決定、緯度変化の測定などを行うための装置。英語名photographic zenith tubeの頭文字から「PZT」ともよばれる。恒星位置を可視光によって地上から観測する装置としては、アストロラーベ、子午環と並んでもっとも高い精度を有する。構造は、鉛直上方を向いて固定されたレンズと、その下方の水銀反射面、およびレンズ直下の小さな写真乾板からなる。水銀面により自動水準が行われるため、気泡管のような水準器が不要であること、写真乾板がレンズの節面に置かれるため、光学系の傾きなどによる像の移動がおこらないこと、観測中は眼視を必要としないため自動観測が可能であること、などにより高精度が達成された。

 観測目的は当初は、不正確な時計を天測によって正確に保持するための時刻観測機であったが、原子時計の発明により、その目的は「緯度変化」を含めた「地球自転変動」の観測という意味をもつようになった。ところが1980年代からは、超長基線電波干渉計(VLBI)による地球自転観測が高精度で行われるようになり、現在ではPZT観測は行われていない。

[中嶋浩一]


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百科事典マイペディア 「写真天頂筒」の意味・わかりやすい解説

写真天頂筒【しゃしんてんちょうとう】

PZT(photographic zenith tubeの略)とも。天頂付近を通過する恒星の位置を写真によって精密に観測する特殊な望遠鏡。鉛直に固定した望遠鏡の対物レンズを通過した光線が,水銀面で反射されて対物レンズのすぐ下においた乾板上に像を結ぶようにしてある。乾板を恒星の動く速度に合わせて動かし,露出中は像を一点に保つ。露出は等しい時間間隔をおいて4回行われ,各露出の間に対物レンズと乾板は一緒に180°回転する。像の位置と乾板移動に連動した時計信号から恒星の子午線通過時刻が測定され,乾板上の像の距離を測定して,これと天文緯度,通過時刻を組み合わせれば恒星時を求めることができる。1911年米国のF.E.ロスが考案,日本では国立天文台(東京都三鷹市と水沢観測センター)にある。
→関連項目子午儀

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世界大百科事典 第2版 「写真天頂筒」の意味・わかりやすい解説

しゃしんてんちょうとう【写真天頂筒 photographic zenith tube】

PZTともいう。天文緯度と恒星時の観測専用望遠鏡の一種。1911年アメリカのロスF.E.Ross(1874‐1966)によって原型が作られ,アメリカ海軍天文台で改良が重ねられた。鏡筒は直立して動かない。対物レンズ(口径20~25cm)の下,焦点距離の半分のところに水銀盤を置き,その面上で反射された星の光が,対物レンズの下にある写真乾板上に結像するようにしてある対物レンズと乾板は頭部回転装置によって回転する。

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