地心に立って眺めたとするとき,地球自転の赤道を天球に投影したものが天の赤道,太陽が見かけ上,地球をまわる公転軌道を投影したものが黄道であり,この天の赤道と黄道との二つの交点のうち,太陽が南から北へ天の赤道をよぎる点が春分点である。恒星時はこの春分点から自転軸を軸に東まわりに観測地点の子午線に至るまでの角度を時間表示したものである。地球上の経度に当たる天球上の天体の座標,赤経はやはりこの春分点から東まわりにその天体に至る角度の時間表示で与えられる。したがって,ある赤経の恒星が南中する瞬間のその地点の恒星時は,その恒星の赤経値に等しい。このことを基にして恒星時は測られる。逆に,恒星時の時計は天体観測には不可欠のものである。恒星時は観測地点の子午線ごとに異なる。経度0°の子午線に対する恒星時をとくにグリニジ恒星時といい,これに対し一般の子午線に対する恒星時を地方恒星時という。平均太陽が春分点から春分点へ天球を一周する1太陽年の間に地球はこれに対して365.2422……自転する。したがって1太陽年の間の春分点に対する地球の自転回数は366.2422……回である。つまり,1年間365.2422……平均太陽日は366.2422……恒星日に当たる。このことから,恒星時の時計は平均太陽日の1日当り約4分(3分56.5554秒)ずつ進む。恒星時の時刻が平均太陽時の時刻に合致するのは秋分の日の近傍である。
執筆者:飯島 重孝
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春分点(天の黄道が赤道を南から北へ横切る点)がある地点の子午線に南中して翌日ふたたび南中するまでの時間を恒星日1日とし、これを24等分して1時、さらに60等分して1分、これを60等分して1秒とする時制である。春分点は歳差という現象により1年につき50秒ずつ黄道上を西方に移動するのとあわせ、章動によっても振動する。恒星時には、歳差だけを受けて天球上を移動する平均春分点と、歳差と章動とを受けて刻々移動する真春分点に対する2通りが考えられる。前者を平均恒星時、後者を視恒星時という。また春分点が南中する時刻は各地で経度差だけ違うが、これを地方恒星時という。
恒星の位置は赤経と赤緯で表され、赤経は春分点から赤道上に15度を1時として東に向かって何時何分何秒として表される。ある地点の子午線に春分点が南中したときを地方恒星時0時とし、地球の自転で春分点が西へ15度移れば地方恒星時は1時で、赤経1時の恒星が南中する。春分点が西へ30度移れば地方恒星時は2時で、赤経2時の恒星が南中する。したがって、赤経の判明している恒星の南中を観測すれば、その赤経がその地の恒星時を与える。恒星の子午線経過観測から直接求められるのは地方視恒星時で、これから章動の影響を取り去れば地方平均恒星時が得られる。平均恒星時と平均太陽日の関係は太陽の運動理論でわかっているから、恒星の子午線経過観測から得る恒星時から平均太陽時を求められる。
[渡辺敏夫]
『渡辺敏夫著『数理天文学』(1977・恒星社厚生閣)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…とくに太陽の場合,時角はその観測地点での午後の時刻と一致する,すなわち太陽の時角に12時を加えると太陽時が与えられる。また恒星の場合は,赤経0時の星の時角によって恒星時が定義される。このように時角は,天体の運行を観測して時刻を決める仕事における必要性から導入されたといえる。…
※「恒星時」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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