日本大百科全書(ニッポニカ) 「冷泉家時雨亭文庫」の意味・わかりやすい解説
冷泉家時雨亭文庫
れいぜいけしぐれていぶんこ
1981年(昭和56)4月1日に京都府教育委員会から認可された財団法人であって、京都市上京(かみぎょう)区今出川(いまでがわ)通烏丸(からすま)東入ル玄武(げんぶ)町599に所在する。初代の会長は坂本太郎、理事長は冷泉家当主の冷泉為任(ためとう)であった。冷泉家は、歌聖藤原定家(ていか)の正統を継いだ家門であって、代々歌道をもって朝廷に仕え、明治時代に至り伯爵に列せられた。同家には、800年の長きにわたって秘蔵された歌書を中心とする多数の典籍や古文書があり、定家自筆の『明月(めいげつ)記』や『古今集』、『古来風躰抄(ふうていしょう)』をはじめ国宝・重要文化財に指定された文献が多く、日本歌道史を研究するうえでの至宝である。同家の邸宅は、母屋(おもや)、御文庫などからなり、江戸時代中期の建築であって、京都に残る代表的な、ほとんど唯一の公家(くげ)屋敷として知られ、82年2月重要文化財に指定された。この邸宅において冷泉家は定期的に古来の伝統に準じた歌会を催している。同財団は、会報『しぐれてい』を発行し(年4回)、典籍の調査・研究の動向や歌会の情況などを会員に知らせている。
[角田文衛]
『冷泉為任監修『冷泉家の歴史』(1981・朝日新聞社)』▽『冷泉布美子著『冷泉家の花貝合せ』(1982・文化出版局)』▽『冷泉貴美子著『冷泉家の年中行事』(1987・朝日新聞社)』