古くは身屋,身舎と書く。庇(ひさし)に対する語で,殿舎または仏堂の中央部分をさす。古代から中世にかけての仏堂や,平安時代の寝殿造住宅などは,中央部の高い空間を持つ母屋と,その周囲をとりまく一段低い空間の庇によって構成されるのが原則だった。そして母屋と庇の境には1間ごとに柱が立って両者を分けていた。したがって母屋と庇とは完全に異質の空間として認識され,またそれに応じた使い方がなされた。たとえば,仏堂では母屋に仏像を安置し,庇を礼拝空間とする,あるいは寝殿における儀式の場合,身分の高い者は母屋に,低い者は庇に着座する例などがあげられる。なお桁(けた)のうち丸桁(がぎよう)よりも内側にあり,棟との間で垂木(たるき)を受ける桁を母屋桁という。
執筆者:清水 拡
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(1)建物の中央の大梁(おおばり)を架けた部分をいい、身舎とも書く。庇(ひさし)に対して建物の主体をなす部分で、母屋の外側に繋(つなぎ)梁を架け、庇が取り付けられる。母屋のみ、あるいは母屋の前後両面に庇がつく建物は、屋根が切妻(きりづま)造となり、四面に庇がつく場合は入母屋(いりもや)もしくは寄棟(よせむね)造となる。仏堂や神社建築、あるいは寝殿造の寝殿や対(たい)などもこの基本は変わらない。(2)母屋桁(げた)の略。屋根の垂木(たるき)を受ける桁。棟(むな)桁に平行して、入側(いりかわ)桁との中間で野地板や垂木を支える水平材をいう。(3)住宅の主屋。門、倉、納屋(なや)などの付属屋に対して、家族の居住する主屋を母屋(もや)または母屋(おもや)という。
[工藤圭章]
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主屋・表屋・面屋とも。家の中央の部分をいったが,近世以後,一般には,屋敷内の付属の小屋に対して主人家族の住む主要建物をさす。ザシキとよぶこともある。小屋にくらべて規模も大きく材料・造作とも上等で,居住性を中心に造られている。通気性・断熱性・採光は板戸・襖(ふすま)・障子を立てたり外したりすることで,開放的にも閉鎖的にも変更でき,四季の変化に対応しうる。さらに草屋根・土壁・畳などにより温湿度調節ができ,随所に居住性を高める工夫がなされている。
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…(1)なんらかの形で分家を持っている家を本家といい,地方によって異なるが,ホンケ,ホンヤ,オモヤ,フトカエ,センゾモトなどの名称で呼ばれている。分家からみて本家は2種類ある。一つは分家者がその家から分家した家であり,いま一つはそうした分家行為なしに契約的に結ばれた本家である。後者は村落生活における必要上,分家がある家に依頼して本家となってもらったものである。同族組織を形成するような著しい上下関係が本家との間に成立していない場合であっても,分家にとって本家は多少とも上位に立つと意識されていることがきわめて多い。…
…屋敷を名請けした百姓が役人,役家,役儀之家,公事屋(くじや)などと呼ばれて夫役負担者とされ,弱小農民は田畠だけを名請けして屋敷の登録をうけず,夫役の負担をまぬがれていた。 検地帳に登録された屋敷は,その多くが屋敷囲いの内部に母屋(おもや)とともに小屋,門屋(かどや),隠居屋などを備え,小屋,門屋,隠居屋には主家の庇護・支配を受ける弱小農民(自立過程の小農)が起居し,母屋には主家が住いした。小屋住み,門屋住い,隠居身分などの弱小農民が家族をもち,その生計が主家のそれから一応独立分離している場合でも,家数人馬改帳(いえかずじんばあらためちよう)(夫役徴集の基礎帳簿)では,1屋敷の内部の生活は1竈(かまど)として把握され,屋敷囲いの内に住む弱小農民の家族は主家の家族に含まれるものとして主家に一括された。…
…建物の平面規模を表す方法の一つで,平安時代に用いられた。当時の建物は内部空間が母屋(もや)(身舎)と庇(ひさし)から構成されており,母屋の桁行(けたゆき)が何間で,その何面に庇が付くかによって全体の規模がわかる。母屋の梁間は2間が普通であるから,とくに表示する必要はない。…
… 一般的に用いられる木造小屋組みは,一般の木造住宅で使われる和風小屋組み,はり間の大きな木造建築で使われる洋風小屋組みが代表的なものである。和風小屋組みは,軒桁の間に松丸太などによる太い小屋ばりを1.8~2.7m間隔で架け渡し,その上に,小屋束(こやづか)と呼ばれる短い柱を約1m間隔で建て,この小屋束の上に,軒桁,棟木と平行に,母屋(もや)と呼ばれる水平部材を架け,この母屋で垂木の中間部分を支えるしくみである(図-b)。はり間が大きくなると,中央に近い部分の小屋束の長さが長くなるので,その場合は,小屋束上に小屋ばりと平行に置かれた二重ばりの上にさらに小屋束を建てることになり,小屋ばり自体も1本の部材ではまにあわなくなるので,柱の上で継いだはりを用いる。…
…それ以上の6間,7間のものは,もとは奥行4間の建物の前に礼堂(らいどう)や拝殿のような礼拝用の建物を双堂の形式で建てていたのが,後に一つ屋根の下に納めるようになったものである。仏堂,社殿の平面のうち,中心部の柱の高いところを母屋(もや)と呼び,その外側にある柱の低いところを庇(ひさし)と呼ぶ。母屋は桁行3間あるいは5間に梁行2間の規模のものが多く,これに庇がつく。…
…左右対称の殿舎配置が原則である(図1)。 寝殿は南面し,正面の柱間3間,側面2間の母屋(もや)の周囲に1間の庇(ひさし)が付くから,正面5間,側面4間が普通の規模である。屋根は入母屋造,葺き材は上等なものは檜皮(ひわだ),一般には茅または板葺きで,瓦葺きとするものはなかった。…
…現在では雨よけのための差掛け屋根を庇と呼ぶが,元来,殿舎の主体部分である母屋(もや)の周囲をめぐる空間を庇といった。用語としては奈良時代後期の文献が初出である。…
※「母屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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