間欠泉(読み)カンケツセン(英語表記)geyser

翻訳|geyser

デジタル大辞泉 「間欠泉」の意味・読み・例文・類語

かんけつ‐せん【間欠泉】

一定の時間を隔てて周期的に噴き出す温泉。宮城県鬼首おにこうべ温泉などでみられる。
[類語]出で湯温泉鉱泉冷泉秘湯噴泉ラジウム泉名湯霊泉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「間欠泉」の意味・わかりやすい解説

間欠泉
かんけつせん
geyser

湧出(ゆうしゅつ)と停止を交互に繰り返す温泉を広い意味で間欠泉という。しかし厳密には、沸騰温度熱水水蒸気の混合物を周期的に噴出する間欠沸騰泉をさし、それ以外のものは間欠冷泉、間欠泡沸泉などという。

 間欠泉には、天然によるものとボーリングによってできたものとがあるが、両者ともに比較的寿命が短く、熱海(あたみ)大湯間欠泉(静岡県)、鬼首雌釜(おにこうべめがま)間欠泉(宮城県)など昔の有名な間欠泉はいまはない。外国には、アメリカ合衆国イエローストーン国立公園のオールド・フェイスフル間欠泉、ニュージーランドロトルアのポフツ間欠泉、アイスランド南西部ハウカダルールのストロックール間欠泉など、勢いの強いものが現存する。

 日本には現在、北海道の羅臼(らうす)、鹿部(しかべ)、宮城県の鬼首、長野県の上諏訪(かみすわ)、大分県の別府(べっぷ)などにボーリングによるものが存在する。間欠泉の噴出状況は各間欠泉で異なるが、だいたい共通して次のような噴出状況を示す。まず噴出が近づくと水位がしだいに上昇し、気泡がたくさん出るようになる。次に少量の湯が静かに湧出し、さらにかなりの量の湯が数回噴出してから突然爆発的な噴湯がおこる。熱水と水蒸気の激しい噴湯を数回繰り返したのち、しだいに勢いを弱め、噴湯が止まると水位は地表下に下がってしまう。このとき、もし孔口上に温泉水のたまった池があると、その水は孔口内に逆流する。このようにして1回の噴出が終わると、普通は次の噴出開始までまったく静かな休止期間が続く。なかには休止期間中にも少量の湯を湧出し続けるものもある。噴出時間と休止時間をあわせたものが間欠泉の周期である。周期は数分から数時間までいろいろあるが、なかには数か月おきに噴出するものもある。間欠泉では、噴出水の化学成分も、噴出の各段階で変化することが知られている。

 間欠泉の機構の説明として次の三つの説がある。

(1)空洞説 熱水の湧出途中に空洞があり、そこで熱水がさらに周囲から加熱されて沸騰し、水蒸気圧がその深さでの静水圧以上になると、空洞中の熱水を押し出して噴出する。噴出により多量の水蒸気が発生すると、蒸発熱によって空洞中の温度が低下し、水蒸気圧が静水圧以下になって噴出が止まる。この説では、噴出水量は空洞の大きさによって決まる。

(2)垂直管説 鉛直に近い湧出管があり、ある深さの水温が沸騰点に達すると、そこで沸騰がおこり、それより上部の水柱を噴出する。もし熱源が最初に沸騰のおこる深さにあって、それ以深の水温が沸騰温度よりかなり低いときには、噴出後湧出管は、下方から上昇してきた低温の水で満たされて、それが沸騰温度にまで加熱されるに要する時間が休止時間となる。この説では、1回の噴出量は加熱部以浅の管内の水量であるから、一般に少ない。

(3)熱水型間欠泉 温泉の湧出管はほぼ鉛直で細く長く、下部は熱水層に達している。熱水の温度は湧出口における沸騰温度よりは高いが、熱水層の深さでの沸騰温度よりは低い。沸騰開始前は静止水頭は湧出口より高く、初めは沸騰しない湯が静かに湧出するが、下方の温度の高い熱水が湧出口に達すると、沸騰して激しく噴出する。しかし熱水湧出の結果、静止水頭が漸次低下し、水面での圧力がその温度での飽和圧力より大きくなれば沸騰はしなくなり、噴出は停止する。次に静止水頭がしだいに回復し、湧出口の高さに達するまでの時間が休止時間である。この説では、ほかの二つの説のように、熱水の温度よりも周りの地層の温度のほうが高い必要はない。

[湯原浩三]


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改訂新版 世界大百科事典 「間欠泉」の意味・わかりやすい解説

間欠泉 (かんけつせん)
geyser

熱水,水蒸気あるいは泥などがある時間間隔で噴出する温泉。geyserは,アイスランドのゲイシルgeysir(噴出という意味)と呼ばれていた間欠泉に由来する。アメリカのイェローストーン,ニュージーランドのロトルアおよびアイスランドは間欠泉で有名。日本では小規模のものが宮城県鬼首(おにこうべ),大分県別府にある。かつて静岡県熱海に大湯と呼ばれた間欠泉があった。1923年9月1日の関東大地震の数ヵ月前から顕著な前兆異常を示し,地震前日には40分もの噴出を続けた。大地震後まもなく大湯間欠泉の活動は消失した。

 間欠泉の噴出機構については空洞説と垂直管説がある。空洞説はG.マッケンジーによって提唱され(1811),K.vonニッダ(1833),本多光太郎・寺田寅彦(1906)らによって発展した。間欠泉の地下には空洞があり,側方から空洞内に地下水が供給されている。この空洞は地下深部からの熱で熱せられる。水温が上昇し水蒸気圧が静水圧をこえると空洞内の熱水が激しく沸騰し,水や水蒸気を噴出する。噴出によって空洞内の圧力が低下し,側方からの水が空洞内に流入する。再び地熱で熱せられ,やがて次回の噴出となる。大量の温泉を噴出する大規模な間欠泉にはこの説が適する。熱海大湯の間欠泉も空洞説で説明されている。垂直管説はR.W.ブンゼンによって唱えられた(1846)。間欠泉の地下は垂直なパイプ状の孔で,空洞はない。この垂直管内の水が地熱で加熱され,下部の水蒸気圧が水管上部の水柱圧にうち勝つと噴泉がはじまる。噴出によって管内の水圧が低下すると周囲から管内に地下水が流入し,再び地熱によって加熱され次回の噴出となる。高温地帯でのボーリング孔の掘削中にこの種の間欠泉的噴出を見ることがある。1回の噴出量が小さく,数分ないし十数分の短い周期をもつ間欠泉の説明に適している。
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百科事典マイペディア 「間欠泉」の意味・わかりやすい解説

間欠泉【かんけつせん】

周期的に噴出する温泉。周期は数秒くらいのものから数年といろいろあり,噴出の高さも水位が少し高くなる程度から最高300〜400mまであり普通は数m程度。間欠的噴出の機構については,地下の空洞に温泉水がたまり地熱などで熱せられ沸騰するときの圧力で噴出するという空洞説,噴孔の底部と出口との間の大きな温度差で噴出するという垂直管説など諸説がある。米国のイエローストーン国立公園,アイスランドのガイサー,日本では宮城県鬼首(おにこうべ)などが著名。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「間欠泉」の意味・わかりやすい解説

間欠泉
かんけつせん
geyser

規則的または不規則的に熱水や水蒸気を吹上げる温泉。火山地域にみられる。ニュージーランド,アイスランドのほか,アメリカのイエローストーン国立公園の間欠泉は世界的に有名。日本では宮城県の鬼首 (おにこうべ) 温泉がその例。

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世界大百科事典(旧版)内の間欠泉の言及

【泉】より

…日本では湧水を利用したマス類やアユ類の大規模養殖が,岩手山麓,那須山系,アルプス山系,富士山麓,伊吹山麓,阿蘇山麓,霧島山系などで行われている。間欠的に湧出する間欠泉は,広島県帝釈峡の一杯水のようなサイフォン型と,洞穴からあふれ出すオーバーフロー型の2種がある。間欠沸騰泉は沸騰温度の熱水と水蒸気の混合物を周期的に噴出し,アイスランド,アメリカ合衆国のイェローストーン国立公園,ニュージーランド北島のものが有名である。…

【温泉】より

…(2)沸騰泉 泉水が沸騰し,水蒸気とともに噴出する高温泉。(3)間欠泉 沸騰泉のうち,温泉の噴出・休止が周期的に行われる温泉。(4)泡沸泉 二酸化炭素,メタンガスなどの気泡とともに湧出する温泉で,泉温は水の沸騰点以下の場合が多い。…

※「間欠泉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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