改訂新版 世界大百科事典 「労働会議所」の意味・わかりやすい解説
労働会議所 (ろうどうかいぎしょ)
camera del lavoro
イタリアにおいて地域単位に組織された労働組合をいう。フランスの労働取引所bourse du travailをモデルとして1891年ミラノで最初に設立され,その後全国各地で設立が相次いだ。当初は自治体の補助金を得て職業紹介,技術訓練,争議調停などの役割を演じていたが,しだいに労働者の自立的機関として地域の労働運動はもとより,住民運動や政治闘争を指導する性格を帯びた。産業別労働組合と違って,さまざまな業種の労働者を含んだ地域的結合に基づく組織として,地域ごとの政治,経済,社会に密着した運動を進めたのが特徴で,20世紀初頭には産業別組合より高い組織率を示していた。1906年諸種の労働組合が結集した全国組織として労働総同盟(CGL)が結成されるが,労働会議所の中には中央に指導権を集中したこの組織に反発するものもあり,また革命的サンディカリストが労働会議所に拠点を求める傾向もみられた。第1次大戦直後,物価高騰に反対する民衆運動が活発となったが,この運動の中心となったのは労働会議所であった。しかし21年以降,ファシストによる襲撃や事務所の破壊をうけて弱体となり,26年ムッソリーニ政府に非合法化された。レジスタンス闘争期の44年に再建され,第2次大戦後は労働総同盟(CGIL)に加入する地域単位の組合としての機能を果たしている。
執筆者:北原 敦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報