六訂版 家庭医学大全科 「匂いを感じない」の解説
匂いを感じない
においを感じない
No sense of smell
(お年寄りの病気)
どのような状態か
香水の香りがしない、食べ物のにおいや風味がわからないといった訴えは、嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)と呼ばれます。
においを感じるためには、においの分子を含んだ空気がにおいを感じとる粘膜(
必要な検査と疑われる病気
前鼻鏡検査、鼻腔内視鏡検査で鼻腔の状態を観察します。また、嗅覚検査(T&Tオルファクトメーターや静脈性嗅覚検査)で、障害の有無や程度を診断します。
一方、においの分子が嗅粘膜に達していても、嗅粘膜や嗅神経のはたらきが弱いために、においを感じなくなる場合もあります。これは嗅粘膜の急性・慢性炎症や、シンナーなどの刺激性ガスの影響などによって生じます。
また、アルツハイマー病の早期に、においを感じなくなることがあることも知られています。
鼻かぜをひくと、鼻がつまってにおいを感じなくなることがあります。大部分はかぜが治ると改善しますが、かぜが治っても嗅覚障害がよくならないことがあります。
これは、感冒(かんぼう)などのウイルスによって、嗅上皮や嗅神経が障害を受けやすいためです。嗅粘膜や嗅神経が完全に障害された場合には、治療が難しくなります。「かぜが治ればにおいもわかるようになるだろう」などと安易に考えず、嗅覚障害が続く場合は専門医への受診が必要です。
家庭での対処のしかた
嗅覚障害の原因をはっきりさせ、適切な治療を早期に受けることが必要です。治療法としては、原因となっている鼻の病気の治療や、ステロイド薬の点鼻療法、ビタミン剤・神経
大前 由紀雄
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報