花粉症、鼻アレルギー(読み)かふんしょう、びアレルギー(英語表記)Hay fever, Allergic rhinitis

六訂版 家庭医学大全科 「花粉症、鼻アレルギー」の解説

花粉症、鼻アレルギー
かふんしょう、びアレルギー
Hay fever, Allergic rhinitis
(アレルギー疾患)

どんな病気か

 吸入性アレルゲンによるI型アレルギー反応が関係し、くしゃみ水性鼻漏(すいせいびろう)鼻閉(びへい)を3主徴とする疾患を、鼻アレルギーあるいはアレルギー性鼻炎と呼んでいます。症状の好発時期により通年性と季節性に分けられます。

 季節性の大部分花粉が原因であり、花粉症と呼ばれています。スギ花粉症は今でこそ認知度が高いのですが、昭和30年代終盤に発見された比較的新しい疾患です。そして、その後、花粉症患者は増え続ける一方です。

原因は何か

 通年性アレルギー性鼻炎の原因としては、室内塵(しつないじん)ハウスダスト)中のダニに対するアレルギーが多くなっています。一方、季節性アレルギー性鼻炎の原因アレルゲンでは、スギなどの花粉が圧倒的に多く、時に真菌(しんきん)胞子などが関係している場合があります。

 花粉が飛散する季節は地方により多少のずれはあるものの、その種類によってほぼ決まっています。たとえば、関東地方では、スギ花粉が1月~4月、ヒノキ花粉が5~6月、カモガヤ花粉が6~8月、ブタクサ花粉が8~9月、ヨモギ花粉が8~9月などです。

 ダニ・アレルギーの多くは10歳以下で発症し、小児アレルギー性鼻炎の大部分はダニ・アレルギーであるといわれています。一方、季節性アレルギー性鼻炎の発症は20~30歳に多くなっています。

症状の現れ方

 主な症状は、くしゃみ、水性鼻漏鼻閉です。それ以外にも咽頭部や眼のかゆみや異物感、流涙、頭痛、皮膚炎のような症状などさまざまな症状を示します。これらの症状は、通年性・季節性アレルギー性鼻炎に共通の症状です。

 ダニをアレルゲンとする通年性アレルギー性鼻炎では、しばしば気管支喘息(ぜんそく)が合併しますが、花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎では、その頻度は比較的低いとされています。これは、花粉の粒子が大きく、下気道に到達しにくいためと考えられていますが、通年性の喘息を合併している人ではスギ飛散時期に喘息が悪化するのが通常です。

検査と診断

 問診でアレルゲンと症状との関連性を検証することが大切です。ダニの場合は通年性でかつ清掃時などに悪化し、スギ花粉の場合は年度によりますが、1月後半~2月ころから症状が出始めて初夏には軽快することが多いようです。

 血中・鼻水中の好酸球(こうさんきゅう)検査、皮膚テスト、誘発テスト、免疫グロブリンEIgE抗体検査などで確実性が増し、またアレルゲンが推定できます。

治療の方法

 通年性アレルギー性鼻炎であれば、局所ステロイド薬や抗ヒスタミン薬などの薬物療法がまずすすめられます。ダニと関係があれば除去目的で絨毯(じゅうたん)の除去や十分な清掃がすすめられます。ダニを主成分とする室内塵によるアレルゲン免疫療法(減感作療法)も有効です。

 一方、花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎の場合には抗原除去は不可能ですが、外出時にマスク眼鏡を使用すること、季節中は抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬を定期的に内服すること、そして点鼻ステロイド療法が有効です。

 一部で、全身ステロイドの注射を行う医師がいますが、重い副作用が起こりうるため安易にすすめられるものではありません。

 スギ花粉については、標準化されたアレルゲンが発売されており、唯一の根本的治療法としてアレルゲン免疫療法(減感作療法)が注目されています。アレルギー専門医に相談するとよいでしょう。

 また、近年インペアードパフォーマンスの問題が欧米では社会問題化しています。インペアードパフォーマンスとは、抗ヒスタミン薬の服用によって、自分では気づかないまま集中力や判断力、作業効率が低下してしまう状態のことです。今後日本でも問題になるかもしれませんので、とくに運転をしなければならない人は、抗ヒスタミン薬を処方してもらう際には医師に必ず相談するようにしてください。

病気に気づいたらどうする

 受診する科目としてはアレルギー科、耳鼻咽喉科がよいと思われますが、喘息で呼吸器内科に通っているケースでは、主治医に相談してください。

関連項目

 アレルゲン免疫療法と治療薬の種類

山口 剛史

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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