改訂新版 世界大百科事典 「北西部条令」の意味・わかりやすい解説
北西部条令 (ほくせいぶじょうれい)
Northwest Ordinance
1787年制定のアメリカの土地条令。独立戦争の勝利によって西部に獲得した広大な領土に,開拓後いかなる形態の政府をつくるかを定めた。1785年の土地条令と並び,連合規約時代の最も重要な条令である。その定めるところは,(1)オハイオ川,ミシシッピ川,五大湖に囲まれた地域を北西部領地とし,将来3ないし5州をつくること,(2)当初は連邦議会の任命する知事および判事が統治するが,自由な成人男子の住民が5000人に達したときには準州議会を開けること,(3)住民が6万人に達したときには,州憲法を制定し,あらゆる点で独立時の13邦と同等の資格で連邦に加入できること,(4)北西部領地では奴隷制は禁止され,住民は宗教の自由,陪審による裁判,人身保護令状などの諸権利を保障されること,等であった。この条令の下では,旧定住地と新開地との関係は,かつてのイギリス本国とアメリカ植民地の関係とはまったく異なる。西部の新開地が植民地的状態におかれるのは,過渡的な一時期のみであり,人口が一定数に達しさえすれば,住民は旧定住地の人々と同等な自由と権利を享受しえた。このような条令が西部の開拓を促進したことは明らかであって,1803年には北西部領地にオハイオ州が誕生した。なお,恒久的植民地をつくらないという原則は,その後アメリカが取得した領土にも貫かれた。
執筆者:岡田 泰男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報