日本大百科全書(ニッポニカ) 「医療広告」の意味・わかりやすい解説
医療広告
いりょうこうこく
医業・歯科医業または病院・診療所に関する、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示をいう。
近年、美容医療サービスに関する情報提供を契機として、消費者トラブルが発生していることなどを踏まえ、2017年(平成29)に医療に関する広告規制の見直しを含む医療法等改正法が成立し、2018年6月に施行された。医療の広告に関する基本的な考え方は、(1)医療は人の生命・身体にかかわるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいこと、(2)医療はきわめて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること、とされ、2017年の広告規制の見直しにおいてもこの基本的な考え方は堅持されている。
2017年の医療法改正においては、広告規制の対象範囲が単なる「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」(以下「広告」という)へと変更され、虚偽の広告をしてはならないと規定された(医療法6条の5第1項)。これにより、法改正以前は原則として規制の対象としなかった医療機関のウェブサイト等についても、他の広告媒体と同様に規制の対象とすることとした。ただし、医療を受けるものによる適切な医療の選択が阻害されるおそれが少ない場合には、広告可能事項の限定を解除できることとされている。広告可能事項の限定解除が認められるのは、医療法施行規則第1条の9の2に規定する要件を満たした場合、具体的には、以下の四つの要件をいずれも満たした場合である(医療広告ガイドライン)。(1)医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること、(2)表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること、(3)自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること、(4)自由診療に係る治療等に係るリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること。
広告の内容および方法は、(1)他の病院または診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと、(2)誇大な広告をしないこと、(3)公の秩序または善良の風俗に反する内容の広告をしないこと、(4)患者等の主観または伝聞に基づく治療等の内容または効果に関する体験談の広告をしないこと、(5)治療等の内容または効果について患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしないこと、という基準に適合するものでなければならない(同法6条の5第2項)。
広告可能な事項は、(1)医師または歯科医師である旨、(2)診療科名、(3)病院・診療所の名称、電話番号、所在地、病院・診療所の管理者の氏名、(4)診療日、診療時間、予約による診療の実施の有無、(5)入院設備の有無、など13のアイテムが示されており、それ以外の広告をしてはならないとされている(同法6条の5第3項)。
[土田武史 2019年2月18日]