日本大百科全書(ニッポニカ) 「南蛮寺興廃記」の意味・わかりやすい解説
南蛮寺興廃記
なんばんじこうはいき
江戸中期に編された反キリシタン俗説書。一巻。編者不詳。幕府がキリシタン禁制を強化した1660年代に現れた排耶(はいや)書や伝承に材料を得て幕藩体制に奉仕する御用学者の編になると思われる。種本は同じく著者不詳の『切支丹根元記(キリシタンこんげんき)』で、西川如見(じょけん)(1648―1724)による世界地理知識を加えているから、18世紀初期を下る時期の編と推定される。同系に属するものに『南蛮寺物語』『切支丹宗門来朝実記』などがあり、若干史実を反映しているが、史書としては取るに足りない。しかし、幕末の破邪僧養鸕徹定(うがいてつじょう)(杞憂(きゆう)道人)による木活字本(1868)で広く知られるようになり、『史籍集覧』などの叢書(そうしょ)類にも収められている。
[海老沢有道]
『海老沢有道著『南蛮寺興廃記・妙貞問答』(平凡社・東洋文庫)』