日本大百科全書(ニッポニカ) 「南通」の意味・わかりやすい解説
南通
なんつう / ナントン
中国、江蘇(こうそ)省南東部、揚子江(ようすこう)下流の北岸に臨む地級市。通州(つうしゅう)など3市轄区、海安(かいあん)、如東(じょとう)2県を管轄し、如皋(じょこう)など3県級市の管轄代行を行う(2016年時点)。人口766万8000(2015)。揚子江デルタ上に位置し、漢代の海陵(かいりょう)県、南北朝の蒲濤(ほとう)県の地で、五代のときに静海鎮、ついで通州が置かれた。清(しん)代に通州直隷州となったが、河北(かほく)省の通州と区別するため南通州と俗称された。辛亥(しんがい)革命後に南通県と改称し、1949年南通県の市街地と近郊に南通市が設置された。
市内を通揚(つうよう)運河と通呂(つうりょ)運河が交差する。揚子江の水運埠頭(ふとう)は南通港と天生港にあり、三つの1万トン級バース(係留地)をはじめ24のバースが設けられている。1983年からは国際貿易港として利用されるようになり、1984年には改革開放政策に沿って沿海対外開放14都市の一つとなった。江北の江淮(こうわい)平原を控え、綿花、ハッカ、米、コウマ、魚など農水産物の取引が盛んである。明(みん)代より紡績業が手工業としておこり、中華人民共和国成立後、機械、化学、電子などの重工業が発達した。一時期は紡績工業をはじめとする軽工業の割合が高かったが、現在は機械製造などの重工業が中心となっている。通州区には南通興東空港がある。
[林 和生・編集部 2017年2月16日]