生産物の重量が比較的軽いもの,繊維,食料品,皮革製品,木製品などを生産する工業を指す。重工業,重化学工業と対比される。軽工業は概して,生産設備に要する資本が少なく,また人間が直接に消費するものを生産する分野が多い。一国の工業化の発展は一般に,軽工業から出発し,しだいに重化学工業へ移っていく。この理由は,軽工業のほうが少ない資本で興すことができ,また生産技術もあまり高度のものを必要としない場合が多いからである。日本の経済発展においても,明治時代に本格的な工業化が始まったとき中心的な役割を果たしたのは,軽工業,なかでも繊維工業である。1935年ころまでは,日本の製造業のなかで最も生産額が大きいのは繊維工業であり,次いで食料品工業であった。その後はしだいに,機械工業,化学工業,鉄鋼業などのウェイトが高くなる〈重化学工業化〉が進展した。
一国の貿易構造も,経済発展がかなり進むまで軽工業製品が輸出の中心となり,一方,輸入は重化学工業品が中心になる。この理由は,軽工業製品のほうが一般に費用に占める人件費の割合が大きいために,人件費の安い国の製品が国際的な競争力をもつからである。
執筆者:下田 雅昭
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もともと、その工業の生産物が軽いものを軽工業、重いものが重工業ということから出たことば。一般的には、いろいろな工業のなかで、主として生産手段生産部門=第一部門を重工業(または重化学工業)とよび、消費資料生産部門=第二部門を軽工業とよんでいる。鉄鋼、石炭、機械、船舶などを生産する工業が重工業であるのに対して、綿、絹、麻、羊毛などを生産する工業が軽工業である。軽工業の場合、工場の建物や設備に要する資本は少なく、したがって資本の有機的構成が低く、逆に重工業および化学工業を含む重化学工業では、工場の設備、機械には巨額な資金が当然に必要であり、有機的構成は高い。普通、資本主義的生産は、大量生産が可能な大衆の生活必需品という観点から、利潤獲得に有利な軽工業から発達した。このような軽工業の発展は、当然のこととして軽工業生産に必要な機械や原材料の生産を促し、その結果、重工業が発展してくるようになる。こうして繊維生産の発展に必要な染料工業、農業生産に必要な化学肥料工業、さらには化学工業の発展全体に必要な工業薬品工業(たとえばソーダ、硫酸、硝酸など)が展開するようになる。
このように、ある国の資本主義生産の発展における産業構成のなかで、軽工業に対して重(化学)工業の比重が大きくなることを「産業構成の高度化」とよび、各国資本主義間の比較を行う場合がある。
[加藤幸三郎]
『楫西光速他編『講座中小企業1』(1960・有斐閣)』
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[分析目的に合わせた産業分類]
最近は,産業の分析目的が多様化しており,それに合わせた産業分類を行うケースが多い。(1)商品の用途面から分類して,生産手段を生産する投資財産業,原材料を生産する生産財産業(以上をまとめて基礎産業),消費にあてられる財を生産する消費財産業(耐久消費財に限定する場合もある),(2)資本装備率が高く,高度な技術と設備を必要とする重化学工業(生産財,投資財関連の産業が多い)とそれらの点で反対の軽工業(消費財関連の産業が多い)という分類,(3)生産過程における加工度の違いによる区分で,生産のための資源や材料を生産する素材産業(素材産業・加工組立産業),材料を加工して単品や部品を生産する加工産業,部品や材料を用いて完成品を生産する組立産業,(4)生産要素の結合具合の違いにより資本装備率の高い資本集約型産業(資本集約型産業・労働集約型産業),それが低く,労働との結合度が高い労働集約型産業,などがある。 また,製造業の内分類として,自動車や電機などの産業を加工組立産業,技術進歩の影響度が高い産業を技術集約型産業,ハードウェアよりもソフトウェアが重要なコンピューター産業などを知識集約型産業などという場合もある。…
※「軽工業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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