原子力に関する行政の民主的な運営を図る目的で内閣府に設置されている。東京電力福島第1原発事故後、原発推進寄りで不透明な運営を批判され、2014年の法改正で機能を抜本的に見直した。有識者の委員も5人から3人に減り、顔ぶれも変わった。福島の事故を踏まえ、関係省庁の調整や、中立的な立場で政府に意見する役割を担う。
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原子力委員会という名称を冠した組織が史上最初に出現したのは、第二次世界大戦直後の1946年1月国際連合においてであって、原子力の軍事利用を管理し、平和的開発を促進することを目的としていた。しかしこの組織は1947年7月以降活動を停止し、1952年1月以降は国連軍縮委員会(現、軍縮会議)に吸収された。
[中島篤之助]
アメリカでは、1946年に成立した原子力法(マクマホン法)に基づき原子力委員会が設立された。第二次世界大戦中、陸軍の管理下にあった原子力開発は、1947年1月1日、D・リリエンソールを初代委員長とする原子力委員会に移管され、文民管理となった。しかし、1954年アメリカが核政策を転換し、「平和のための原子力Atoms for Peace」政策を採用するまでの期間は、文民管理とはいいながら、その活動は核兵器開発のための造兵機関としての活動に集中された。1954年以降初めて、原子力発電などの平和利用のための研究開発、助成、安全規制などを行う強力な行政委員会として活動することとなる。アメリカは同時に世界各国と原子力平和利用に関する双務協定の締結を推進したので、各国にも原子力委員会がつくられることになった。アメリカでは1975年に、安全規制部門を独立させて原子力規制委員会(NRC)を組織し、開発部門はエネルギー研究開発局(ERDA)となったが、のちに新設されたエネルギー省に吸収された。
[中島篤之助]
日本の原子力委員会は、原子力基本法(昭和30年法律第186号)に基づき、原子力の研究・開発および利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的運営を図る目的をもって、1956年(昭和31)1月、旧総理府に設置された。1978年10月、安全規制行政を担当する原子力安全委員会が分離独立した。その後、2001年(平成13)1月の中央省庁再編により、総理府が再編統合されて内閣府になったのに伴い内閣府に移管された。
原子力委員会は、法律上は行政法上の八条機関(国家行政組織法8条に基づいて設置された行政機関の一部で答申が省庁との整合性を要する)であるが、その勧告を総理大臣が尊重しなければならないことや、総理大臣を通じて関係機関の長に勧告しうることなど、単なる諮問機関ではなく、実質的に原子力平和利用の研究・開発および利用推進の最高責任機関となっている。原子力委員長は、中央省庁再編までは科学技術庁長官である国務大臣が兼務することとなっていたが、内閣府に移管されてからは、学識経験者が就任することになった。委員長と4人の委員は、国会の同意を得て内閣総理大臣によって任命される。同委員会は重要研究開発および政策に関する各種専門部会を設置して調査審議を進め、それを「原子力開発利用長期計画」に反映することとされ、2000年までおおむね5年ごとの改定がなされてきた。2005年策定分からは「原子力政策大綱」と名を改め、10年程度の期間を目安として計画を策定することとなったが、原子力安全委員会(2012年以降、原子力規制委員会)に移った。
[中島篤之助]
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原子力の研究,開発および利用に関する国の施策を計画的に遂行し,原子力行政の民主的な運営を図ることを目的として,1956年1月に総理府に設置された委員会。行政機関の長の諮問に応じて意見を具申するという単なる諮問機関ではなく,原子力の研究,開発および利用に関する重要事項(安全確保のための規制に関する事項を除く)について,自ら企画し,審議し,決定する権限を有しており,内閣総理大臣は,原子力委員会の決定について報告を受けたときは,これを十分に尊重しなければならない。また,所掌事務について必要があると認めるときは,内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができるほか,関係行政機関の長に対し報告,資料提出等を求めることができるという法的権限を有している。原子力委員会は,以上のような権限に基づき,原子力研究・開発・利用を進めるに当たっての長期的指針となるべき長期計画を数年おきに策定するほか,原子力に関する各研究開発プロジェクトごとの計画の策定,関係行政機関の原子力利用に関する事務の総合調整などにより,原子力利用の計画的推進を図っている。
原子力委員会は,委員長と4人の委員で構成され,委員長は科学技術庁長官である国務大臣が当たることとなっており,委員は衆参両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する。また,25人以内の参与と専門の事項を調査審議させるための専門委員を非常勤で置いている。原子力委員会はかつてのアメリカ原子力委員会United States Atomic Energy Commission(USAEC)同様,原子力の安全確保のための規制も実施していたが,1978年10月原子力安全委員会が発足し,同業務は原子力安全委員会が行うこととなった。
執筆者:天野 徹
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(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)
(飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…56年には原子力基本法が発効し,民主,自主,公開のいわゆる原子力三原則を法律によって定め,日本の原子力開発の基本姿勢となった。同年,原子力委員会が設置されるとともに,日本原子力研究所,原子燃料公社(のち動力炉・核燃料開発事業団となり,1998年10月より核燃料サイクル開発機構)が設立され開発母体となった。原子力委員会は原子力開発利用長期計画を策定し,これらの機関での研究開発の方向を示す役割を担った。…
※「原子力委員会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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