原子力管理(読み)げんしりょくかんり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

原子力管理
げんしりょくかんり

原子力(→原子エネルギー)はその危険性に対処するための十分な用意を必要とする。日本では 1955年にアメリカ合衆国が平和利用について援助を申し出たことを直接の契機として,原子力の開発と管理の体制が発足した。その法的基礎は同 1955年に成立した原子力基本法である。これによって原子力利用を平和目的のものにかぎり,民主・自主・公開の三原則のもとで,その開発を進めることになった。また原子力委員会が設置されて,平和利用を逸脱しないように核物質を管理するとともに,開発の企画と調整を行ない,さらに原子力の安全性にも責任を負うこととなった。1978年には原子力委員会から原子力安全委員会が分離され,安全委員会が原子炉の安全性について責任を負い,関係省庁の安全審査を重ねて審査することになった。2001年には原子力関連施設の安全審査や事故の際の対応などを担う原子力安全・保安院が経済産業省の一組織として新設された。2011年に福島第一原子力発電所事故が発生して管理体制が見直され,原子力安全行政は 2012年発足の原子力規制委員会に一元化された。原子力の軍事利用については,国際的な管理が検討されてきた。第2次世界大戦直後,国際連合で検討されたが,アメリカとソビエト連邦の対立により実現をみなかった。その後アメリカは友好国に平和利用を促しながら,これが核兵器の拡散を招くことを恐れ,再び核物質の国際管理を推進した。1957年に設立された国際原子力機関,1970年に発動した核兵器不拡散条約はその成果であり,日本をはじめ,多くの国々が国際原子力機関の保障措置を受け入れている。

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百科事典マイペディアの解説

原子力管理【げんしりょくかんり】

原子力が大量破壊兵器に使用される危険を防ぎ,平和利用を進展させるために,その使用・取扱いを規制すること。国内的には,核分裂性物質や情報の管理を主とし,米国では原子力法(1946年),日本では原子力基本法(1955年)で規制する。国際管理は原子爆弾完成以前から米国内で論議があり,1946年国連に原子力委員会が設けられたが,管理方法につき米国のバルーク案とソ連案が対立,1952年原子力委員会と通常軍備委員会が合一し国連軍縮委員会が設置され,東西双方から軍縮案が提示されたが,やはりまとまらなかった。1953年アイゼンハワーは平和利用に関する国際協力機関の設置を提唱,1955年ソ連も参加し,1957年国際原子力機関(IAEA)として発足,1963年部分的核実験停止条約,1968年核拡散防止条約(NPT)を締結した。1974年のインドの核実験以後,平和利用目的の輸入核物質の核兵器への転用防止についての規制強化が国際世論となった。IAEAはこれらを国際協定や条約として実現するための諸業務および査察を含む国際保障措置のための業務を行っている。1996年包括的核実験禁止条約(CTBT)が国連総会で採択されたが,潜在的核保有国であるインドが反対していたため,発効は困難視されていた。1998年5月インドが24年ぶりに地下核実験を再開,パキスタンも初の核実験を実施。両国に対してIAEA理事会が非難決議を採択,米国は経済制裁を発動するなど国際世論も反発した。同年9月国連総会でパキスタンが1年以内にCTBTに署名の方針を表明,インドも署名に前向きの姿勢を示すなど,核管理体制は新たな局面を迎えたが,アメリカ上院議会は1999年10月CTBTの批准を否決した。2004年にはパキスタン(NPT未加盟)で国際的な〈核の闇市場〉の存在が明らかにされ,イランや北朝鮮の核開発疑惑が深まるなど,原子力管理の困難さが浮彫りになった。平和利用の面でも,2011年3月の東京電力福島第一原発の事故が,チェルノブイリ原発事故と同等レベル(INESでレベル7)の史上最悪レベルの大事故となり,国際的な安全基準と危機管理の必要性が緊急に求められ,国際的な原子力管理の新たな枠組み作りという課題が急浮上している。
→関連項目OECD原子力機関原子力発電

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世界大百科事典 第2版の解説

げんしりょくかんり【原子力管理】

原子力が大量破壊兵器に使用される危険を防ぐため,その研究,開発,利用などを規制すること。第2次世界大戦後の軍縮交渉は,それ以前の兵器とはけた違いの破壊力を持つ原子兵器の処理が中心課題となった。国際連合総会は1946年1月,原子力が平和目的だけに使われるよう管理するため,国連原子力委員会United Nations’ Atomic Energy Commissionの設置を決めた。同年6月に開かれた同委員会の第1回会議に,アメリカのバルークBernard Mannes Baruch代表は原子力国際管理案を提出した。

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