原子力安全委員会(読み)ゲンシリョクアンゼンイインカイ

デジタル大辞泉 「原子力安全委員会」の意味・読み・例文・類語

げんしりょく‐あんぜんいいんかい〔‐アンゼンヰヰンクワイ〕【原子力安全委員会】

平成24年(2012)まで内閣府に設置されていた行政機関。日本の原子力安全規制に関する政策の決定や安全規制基準・指針類の策定を行う組織として、昭和53年(1978)に原子力委員会から分離して新設。平成24年9月に廃止され、原子力規制委員会へ移行した。NSC(Nuclear Safety Commission)。

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共同通信ニュース用語解説 「原子力安全委員会」の解説

原子力安全委員会

2011年3月の東京電力福島第1原発の事故発生時、日本の原子力利用の安全規制を監視するために設置されていた国の委員会。もとは原子力委員会と一体だったが、1978年に分離された。有識者5人で構成、事務局は内閣府に置かれていた。経済産業省原子力安全・保安院とのダブルチェック体制を取っていたが、福島の事故対応に失敗して共に2012年に解体。その後、独立性の高い原子力規制委員会と事務局役の原子力規制庁が発足した。

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精選版 日本国語大辞典 「原子力安全委員会」の意味・読み・例文・類語

げんしりょく‐あんぜんいいんかい‥アンゼンヰヰンクヮイ【原子力安全委員会】

  1. 日本の原子力安全規制、審査などを行なう内閣府の付属機関。昭和五三年(一九七八)原子力委員会から分離して設置された。

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百科事典マイペディア 「原子力安全委員会」の意味・わかりやすい解説

原子力安全委員会【げんしりょくあんぜんいいんかい】

原子力の研究,開発,利用に関する国の施策を計画的に遂行し,とくに安全確保の充実強化を主任務として,1978年10月に総理府に設置された。原子力の研究,開発および利用に関する事項のうち,安全の確保のための規制に関する事項について企画し,審議し,決定する権限を持つ。内閣総理大臣は,原子力安全委員会の決定について報告を受けたときは,これを十分に尊重しなければならない。また,所掌事務について必要があると認めるときは,内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができること等の法的権限を有している。原子力安全委員会は,所掌事務遂行の一環として,原子炉等規制法に基づき,原子炉の設置許可等の基準の適用のうち安全性および技術的能力に関する事項について,主務大臣の諮問に応じて必要な調査審議を行い,その結果を答申する。主務大臣は,原子炉の設置許可等の行政処分を行う場合は,この答申に盛り込まれた原子力安全委員会の意見を十分に尊重して行わなければならないことになっている。日本の原子力安全規制は経済産業省原子力安全・保安院などが具体的な安全規制を行うが,こうした行政省庁から独立した原子力安全委員会がそれを監視・監査することになっていて,委員会は,原子力の安全と危機管理のセンター的な役割を期待され,高度に専門的な識見を有する人物が委員に任命される。委員会は,衆参両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する5人の委員で構成され,委員長は委員の互選で選出される。また,原子炉に係る安全性に関する事項を調査審議する原子炉安全専門審査会および核燃料物質に係る安全性に関する事項を調査審議する核燃料安全専門審査会を置き,さらに,専門の事項を調査審議させるための専門委員を置く。委員会は,1999年,当時としては日本で最悪の原子力事故とされた東海村臨界事故を受けて,監視・監査機能をはじめ,緊急時対応の体制などの抜本的体制強化がなされたとされた。2001年の中央省庁再編で,総理府から内閣府に移管,02年の東京電力のデータ改ざん問題などを受けた原子炉等規制法の改正により,委員会の機能は事務局体制も含めてさらに強化されたとされてきた。同年,国の求めに応じて各電力会社が提出した,シビアアクシデントに対するアクシデントマネジメント策の報告書に対して妥当の評価を与えた。しかし,11年3月に発生した東日本大震災に伴う,福島第一原発事故は,INES国際原子力事象評価尺度)の過去最悪レベルであるレベル7(暫定,4月12日発表)に達する大事故となり,日本の原子力の安全神話は完全に崩壊。原子力安全委員会は,安全基準の設定と大事故対策の甘さに加え,事故発生後の見通しと対応の遅れ,情報伝達の混乱など,あらゆる面で対応能力の欠如を一気に露呈した。原子力安全委員会を中心とする日本の原子力安全規制体制は,国内はもとより国際的にも厳しい批判にさらされ,根本的な見直しを迫られた。原子力安全規制体制のみならず,その体制を支えてきた,日本の原子力工学の産学癒着体制も批判されている。11年5月現在の委員は,斑目春樹(委員長,元東京大学大学院工学系研究科教授),久木田豊(委員長代理,元名古屋大学大学院工学研究科教授),久住静代(元財団法人放射線影響協会放射線疫学調査センター審議役),小山田修(元日本原子力研究開発機構原子力化学研究所所長),代谷誠治(元京都大学原子炉実験所所長)の五名である。事故後,原子力安全規制が,経済産業省の原子力安全・保安院による規制とそれを監視する内閣府の原子力安全委員会に別れていて安全委員会の役割が形骸化していると強く批判されたことを受け,この反省に基づき,政府は環境省に新たに外局として原子力規制に関わる部署を設け,規制・監視に関わる部署をまとめて移管することを検討,環境省の外局として原子力規制庁を新設する案をまとめた。同案では,原子力規制庁の独立性を確保する監視機関として,原子力安全委員会を廃止して,庁内に〈原子力安全調査委員会〉を設置することにし,事故調査など従来にない強力な権限を付与するとした。原子力規制庁に関する法案は,野田佳彦内閣閣議決定をへて12年1月31日に国会に提出された。しかし,原子力規制庁設置までの間は,原発再稼働のためのストレステストの評価など,原子力安全規制の重要な仕事は引き続き現在の原子力安全委員会が担っている。
→関連項目アメリカ原子力委員会伊方原発大飯原発原子力委員会原子力発電原発事故

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子力安全委員会」の意味・わかりやすい解説

原子力安全委員会
げんしりょくあんぜんいいんかい

日本の原子力の研究・開発および利用に関する事項のうち、安全確保に関する事項について企画し、審議し、決定する権限をもっていた委員会。1974年(昭和49)原子力船「むつ」の放射線漏れ事故を契機に、原子力行政、とくに安全規制のあり方についての見直しが行われ(原子力行政懇談会)、原子力委員会の機能のうち、安全規制を独立して担当する原子力安全委員会が旧総理府に設置された(1978年10月4日)。その後、2001年(平成13)1月の中央省庁再編により総理府が再編統合されて内閣府となったのに伴い、原子力委員会とともに内閣府に移行した。

 原子力安全委員会は、国会の同意を得て内閣総理大臣が任命する常勤および非常勤の委員5名で組織され、委員長は常勤委員のうちから互選によって選ばれた。初代委員長は吹田徳雄(すいたとくお)(1911―1981)。

 原子炉安全専門審査会および核燃料安全専門審査会が常置されていたほか、原子炉や核燃料の安全基準などの各種専門部会が設けられて調査審議を行っていた。内閣総理大臣の報告尊重義務などは原子力委員会と同じであるが、アメリカの原子力規制委員会などのような強大な権限を有する行政委員会ではないため、実際の許認可権を掌握する経済産業省(旧通産省)などに対し、有効な再審査(ダブルチェック)が可能かどうかが危惧(きぐ)されていた。

 また、原子力の研究開発は文部科学省科学技術庁文部省が統合)が担当し、原子力のエネルギー利用に関する規制・安全確保等の所掌は経済産業省が担当することになった。また、経済産業省外局の資源エネルギー庁に原子力安全・保安院が設けられた。

 原子力安全委員会の内閣府への移行は、同委員会の重要性が増していることを示すものではあるが、安全確保の作業に必要なスタッフの多くが、原子力安全・保安院に移る可能性があり、内閣府でのスタッフ確保が委員会機能の有効性を左右する。2001年時点の原子力安全委員会事務局は、総務課のほかに審査指針課、管理環境課、規制調査課という構成となっていた。

 1999年9月30日に茨城県東海村の核燃料加工工場(JCO東海事業所)で起こった臨界事故は、作業員2名が死亡、日本の安全規制体制の欠陥をあからさまに示す結果となった。事故発生に際して、安全規制を担う国の機関である原子力安全委員会と旧科学技術庁の両機関ともに防災上拙劣な対応しかとれないまま延々と時間を過ごし、付近住民を中性子照射に曝(さら)されるままにした。事故の終息のために現地に赴いた一原子力委員が述べているように、安全委員は何らの行政権限をもたないために、終息のための措置は命令ではなく要請にとどまったのである。事故の安全審査上の問題点として、(1)中・高濃縮ウラン用の「安全審査指針」をもたずに安全審査が行われていたこと、(2)臨界防止に必要な形状制限が認可された装置では守られない可能性があるにもかかわらず、質量制限に注意すべしという指示にとどめてしまったこと、(3)再溶解および均一化工程について具体的な検討を行っていなかったこと、などがあげられる。しかし、これらの欠陥について、政府の設けた「ウラン加工工場事故調査委員会」の報告では、ほとんど触れられていない。それはこの委員会が原子力安全委員会のもとに設置され、その事務局を科学技術庁が行ったためであろう。アメリカのスリー・マイル島(TMI)原発事故の際には、事故調査委員会(「ケメニー委員会」)が大統領に直属し、強大な権限をもつ原子力規制委員会(NRC)も事故調査の対象となったのと比べれば雲泥の差がある。なお、かつて原子力船「むつ」の事故に際して設けられた原子力行政懇談会は首相の私的諮問機関であった。中央省庁再編という機会を利用して、原子力行政のあり方について再度検討が行われるべきであった。

[中島篤之助]

原子力安全委員会は2012年(平成24)9月に廃止され、新設された原子力規制委員会に移行した。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「原子力安全委員会」の意味・わかりやすい解説

原子力安全委員会 (げんしりょくあんぜんいいんかい)

原子力の研究,開発および利用に関する国の施策を計画的に遂行し,原子力行政の民主的な運営を図ることを目的として,1978年10月に新たに総理府に設置された委員会。原子力の研究,開発および利用に関する事項のうち,安全の確保のための規制に関する事項について企画し,審議し,決定する権限を有しており,内閣総理大臣は,原子力安全委員会の決定について報告を受けたときは,これを十分に尊重しなければならない。また,所掌事務について必要があると認めるときは,内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができること等の法的権限を有している。原子力安全委員会は,所掌事務遂行の一環として,原子炉等規制法に基づき,原子炉の設置許可等の基準の適用のうち安全性および技術的能力に関する事項について,主務大臣の諮問に応じて必要な調査審議を行い,その結果を答申している。主務大臣は,原子炉の設置許可等の行政処分を行う場合は,この答申に盛り込まれた原子力安全委員会の意見を十分に尊重して行わなければならないこととなっている。

 原子力安全委員会は,衆参両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する5人の委員で構成され,委員長は委員の互選で選出される。また,原子炉に係る安全性に関する事項を調査審議する原子炉安全専門審査会(45人以内の審査委員で構成)および核燃料物質に係る安全性に関する事項を調査審議する核燃料安全専門審査会(40人以内の審査委員で構成)を置いており,さらに,専門の事項を調査審議させるための専門委員を置いている。
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知恵蔵 「原子力安全委員会」の解説

原子力安全委員会

原子力の安全確保のための規制を担当する委員会。事務局は内閣府内。原子力船「むつ」の放射線漏れをきっかけに、原子力行政を推進する原子力委員会が安全審査も所管することへの批判が高まり、1978年10月に設置された。委員長を含む5人の委員で構成。安全審査基準を定めて、それに基づいて審査を行う。内閣総理大臣を通じて関係行政機関に勧告する権利をもっている。委員会の下に原子炉安全専門審査会(非常勤審査委員60人以内で構成)と核燃料安全専門審査会(同40人以内)、分野ごとの専門部会がある。また、大事故の際に、国や自治体を支援するための緊急技術助言組織ももつ。実用発電炉やウラン濃縮、使用済み核燃料再処理などの安全審査は直接には経済産業省が行い(一次審査)、安全委員会はその審査の妥当性を審査する(二次審査)というダブルチェック体制の一方の役割を受け持つ。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

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