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原子線 げんしせんatomic beam

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

原子線
げんしせん
atomic beam

中性原子の線束。原子ビームともいう。気体の原子 (固体,液体の場合は加熱して得られた蒸気) を容器の細孔から噴出させ,狭いスリットを通して得られる。磁気共鳴メーザー,電波分光,原子衝突,化学反応の研究などに利用される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

原子線
げんしせん
atomic beam

中性原子の集団を一定の進行方向に細い線束として走らせたもの。原子ビームともいう。普通、固体や液体から蒸発させた蒸気を、平均自由行程に比べて十分狭いスリット(またはノズル)を何回か通過させてつくる。20世紀の初期のころには、原子線の方法は気体分子運動論の検証のために用いられたが、その後、原子の量子状態の精密測定に応用され、多数の画期的研究を生んだ。O・シュテルンとゲルラハは1922年、銀の原子線が強い不均一磁場中を走ると、これが2本のビームに分離することをみいだし、電子スピンによる方向量子化(角運動量の磁場方向成分が、とびとびの値をとること)の存在を実証した。シュテルンはさらにこの方法を改良して陽子の磁気モーメントの測定に成功し、陽子の異常磁気モーメントを発見した(1933)。ラービは1930年代、原子線の方法をさらに発展させ、磁気共鳴法と組み合わせて、原子核の磁気モーメントの測定法を確立した。1948年クーシュ(クッシュとも表記する)とフォーリーHenry Michael Foley(1917―1982)は、同様の方法により電子の磁気モーメントの精密測定を行い、異常磁気モーメントを発見した。また同年W・E・ラムは、マイクロ波磁気共鳴法を用いて、水素原子の2P1/2状態と2S1/2状態の間のエネルギー差(ラム・シフト)を測定した。この二つの発見は、量子電磁力学における朝永(ともなが)‐シュウィンガー理論の実験的根拠を与えた。
 原子線の方法はメーザーにも応用される。水素原子メーザーはその例で、水素原子の基底状態の超微細構造準位のうち、不均一磁場を用いて高い準位にある原子だけを選別することにより反転分布した原子線をつくるものである。この原子線は約1420.4メガヘルツのマイクロ波を発振するメーザーとなり、きわめて精度の高い周波数標準として利用される。また、セシウム原子の超微細構造準位間遷移は「秒」の定義として使用されている。[鈴木 洋・中村信行]

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世界大百科事典内の原子線の言及

【分子線】より

…高真空中に気体分子を吹き出させ,狭いスリットを何回か通過させてほぼ平行にしたもの。原子線atomic beamは単原子の分子線に相当する。原子線や分子線を利用した研究としては,磁場による銀の原子線分岐を観測し,電子のスピン導入の糸口となったシュテルン=ゲルラハの実験(1921)がよく知られているが,この方法はその後,分子や原子の微細なエネルギー構造を研究する磁気共鳴法へと発展した。…

※「原子線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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