原発事故調査委員会(読み)げんぱつじこちょうさいいんかい

百科事典マイペディア 「原発事故調査委員会」の意味・わかりやすい解説

原発事故調査委員会【げんぱつじこちょうさいいんかい】

福島第一原発事故(2011年3月)の後,事故の原因調査と検証のために設置された二つの公的調査委員会と一つの民間調査委員会をさす。他に事故当事者である東京電力も事故調査委員会を設置している。公的調査委員会は,国会事故調と政府事故調(内閣事故調)と呼ばれるもの。政府事故調は,福島第一原発と福島第二原発の事故の原因及び当該事故による被害の原因を究明することと,当該事故の被害拡大防止と同種事故の再発防止のための政策提言とを目的として,内閣官房に設置された。委員長は,失敗学を提唱する桐畑洋太郎(東京大学名誉教授)。委員長代理はノンフィクション作家の柳田国男。委員には他に,地震学者,放射線生物学者,IAEA元日本代表の外務官僚,科学史研究者など8名が委嘱された。2011年5月,菅直人内閣閣議で決定され,2012年7月に最終報告が出された。国会事故調は,東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法に基づき,委員長は医学者の黒川清(東京大学名誉教授)。委員には地震学者,ノーベル賞受賞化学者,放射線医学者など9名が委嘱され,2011年12月発足,2012年7月報告書を発表した。政府事故調報告書は,事故の主因は地震ではなかったと指摘,事故直後の原子炉損傷を否定した。これに対して国会事故調報告書は,地震で破断した亀裂から原子炉が高温高圧になって穴を拡げ,そこから放射性物質が漏れた可能性を否定していない。また,事故発生直後,東京電力本社が福島第一原発の事故対応に当たっている所員の全面撤退を指示したか否かという〈撤退問題〉については,国会事故調は〈全面撤退は首相官邸誤解〉と認定,東京電力清水社長(当時)の連絡が曖昧なところがあったと指摘した。政府事故調は,東京電力の全面否定の主張根拠がない,としている。非常用冷却装置の操作については,政府事故調は事態の進展を的確に予測し事前に対応するという点で,装置の機能や運転操作について現場に十分な理解がなかったと指摘したのに対して,国会事故調は,単純に現場の運転員の判断・操作の非を問うことはできないと指摘している。事故の責任の所在の問題については,政府事故調は,大津波にたいする東京電力の緊迫感と想像力の欠如と政府の危機管理態勢の不備を指摘,国会事故調は,規制すべき側が事業者のとりこになる逆転関係が存在したと指摘,明らかに自然災害ではなく人災であると述べている。しかし,両方の調査委員会とも当事者である東京電力の情報隠蔽(いんぺい)体質を崩すことができず,事故の検証は十分になされたとはいいがたい。2013年2月,国会事故調の元委員田中三彦(科学評論家,元原子炉製造技術者)は,福島第一原発1号機原子炉の非常用復水器が津波ではなく,地震によって壊れ機能しなかったとの疑念のため2012年3月の調査を申し入れたが,2012年2月28日東京電力企画部長に建屋内部は真っ暗で危険であると説明され調査を断念したが,東京電力側のこの説明は虚偽(きょぎ)で調査妨害であったとして,衆参両院議長と経済産業相に文書を提出し調査を要請している。
→関連項目原子力発電民間事故調

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