内科学 第10版 「原発性側索硬化症」の解説
原発性側索硬化症(運動ニューロン疾患)
定義・概念
原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)は,運動ニューロン疾患のうち,病変が上位運動ニューロンのみに限定されるものである.孤発性で原因は不明であり,進行性の全身の痙性がおもな症状である.ALSの一亜型であるとの考え方もある.
病理
肉眼的に中心前回のみの萎縮を認める例,前頭葉全体に萎縮が認められる例がある.中心前回ではBetz細胞の変性を認め,内包後脚,中脳大脳脚の錐体路に一致して限局した変性を認める.脊髄では側索の錐体路に一致して変性が認められるが,前角の萎縮はなく,前角細胞は保たれる.臨床的にはPLSであっても,病理では前角細胞にALSの特徴とされるBunina小体やユビキチン陽性封入体を認める症例も報告されている.
臨床症状
大部分は下肢の痙性対麻痺で発症し,症状が徐々に上行して痙性四肢麻痺および偽性球麻痺を呈する.上肢の痙性麻痺や偽性球麻痺が初発症状である例も存在する.全身の筋萎縮や線維束性収縮を認めないことが特徴である.前頭側頭葉変性症を合併する例もある.当初はPLSの臨床像であった例が長期の経過を経て,下位運動ニューロン症候を呈してくる例もあり,ALSとの異同について議論がある.
経過・予後
緩徐進行性であり,ALSに比して経過は長い.
治療
根本的な治療法はない.バクロフェン,ダントリウムなどの抗痙縮薬が痙性改善に有用な場合がある.[祖父江 元]
■文献
平山恵造:若年性一側上肢筋萎縮症—その発見から治療まで. 臨床神経,33: 1235-1243, 1993.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報