運動ニューロン疾患(読み)うんどうにゅーろんしっかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「運動ニューロン疾患」の意味・わかりやすい解説

運動ニューロン疾患
うんどうにゅーろんしっかん

筋肉の運動を支配する神経系統だけが、選択的に侵される原因不明の変性疾患をいう。慢性進行し、重篤な運動障害をおこすが、特別な治療法がまだなく、特定疾患(難病)の一つとされている。

 運動機能に関与するニューロンは、大脳皮質から脊髄(せきずい)の前角細胞に至る上位運動ニューロンと、前角細胞から骨格筋の運動終板に至る下位運動ニューロンに分けられる。運動ニューロン疾患に属する代表的な病気は、上位と下位の両運動ニューロンが侵される筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症である。そのほか、上位運動ニューロンの障害による家族性痙性対麻痺(けいせいついまひ)、下位運動ニューロンの障害による進行性脊髄性筋萎縮症や進行性球麻痺などがある。

 家族性痙性対麻痺は小児期、思春期に発病し、両下肢の痙性麻痺を特徴とし、進行は緩徐である。進行性脊髄性筋萎縮症は30~50歳に好発し、四肢末梢(まっしょう)に筋萎縮や筋力低下を認める。進行性球麻痺では延髄の運動神経核が侵され、嚥下(えんげ)障害、構語障害、舌の萎縮などがみられる。この病気は単独でみられることもあるが、筋萎縮性側索硬化症に伴うことが多く、進行が早くて予後はきわめて悪い。

[海老原進一郎]

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