双曲線関数(読み)そうきょくせんかんすう(英語表記)hyperbolic function

改訂新版 世界大百科事典 「双曲線関数」の意味・わかりやすい解説

双曲線関数 (そうきょくせんかんすう)
hyperbolic function

指数関数を用いて定義される次の6個の関数を総称して双曲線関数という。

 双曲線関数は三角関数類似性質をもっている。すなわち,coshxsechxとは偶関数,他は奇関数であり,

 sinh xcosechx=1,cosh xsechx=1,

  tanh xcothx=1

 cosh2x-sinh2x=1,1-tanh2x=sech2x

  coth2x-1=cosech2x

また例えばsinhxとcoshx加法定理,微分法の公式,べき級数展開は次のようになる。

 sinh(xy)=sinhx coshy+coshx sinhy

 cosh(xy)=coshx coshy+sinhx sinhy

 (sinhx)′=coshx,(coshx)′=sinhx

 双曲線関数のグラフは図1のようになる。双曲線関数に対して,三角関数のことを円関数ということがあるが,それは次のような両者の類似点による。図2のように,円周x2y2=1の上の点Pからx軸に垂線PMをおろすと,∠AOP=θ(ラジアン)のとき,すなわち図の扇形面積がθ/2のときに,PM=sin θ,OM=cos θとなるが,一方,双曲線x2y2=1の上の点Pからx軸に垂線PMをおろすと,図の灰色部分の面積がσ/2のときに,PM=sinh σ,OM=cosh σとなる。

 指数関数exの変数x複素数zに拡張されるから,双曲線関数も複素数zの関数に拡張される。このとき,複素変数の三角関数との間に次の関係がある。

 sinhz=-isin iz,coshz=cos iz

 tanhz=-itan iz,cothzicot iz

 sechz=sec iz,cosechzicosec iz
三角関数 →指数関数
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「双曲線関数」の意味・わかりやすい解説

双曲線関数
そうきょくせんかんすう
hyperbolic functions

指数関数を用いて定義される六つの関数、すなわち、(1)双曲線正弦関数、(2)双曲線余弦関数、(3)双曲線正接関数、(4)双曲線余接関数、(5)双曲線正割関数、(6)双曲線余割関数を総称していう。


 sinhの読み方は、ハイパーボリック・サインで、他も同様に読む。双曲線関数は三角関数と似た性質をもっている。いま、
  x=cosht, y=sinht
と置くと、x2-y2=1という関係がある。したがって、この関数は直角双曲線媒介変数表示するために用いられる。とくにy=coshxのグラフはカテナリーとよばれる。

 双曲線関数の逆関数は次のようになる。これらは初等関数不定積分において重要である。


etをtが複素数の場合にまで拡張して考えることにより、双曲線関数もtが複素数値の場合にまで拡張して考えることができる。そうすると

となる。

[竹之内脩]


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百科事典マイペディア 「双曲線関数」の意味・わかりやすい解説

双曲線関数【そうきょくせんかんすう】

指数関数を用いて定義される次の関数をいう(記号のhは双曲線hyperbolicの頭文字)。 双曲線正弦 sinh x=(e(x/)−e(-/)(x/))/2 双曲線余弦 cosh x=(e(x/)+e(-/)(x/))/2 双曲線正接 tanh x=sinh x/cosh x 双曲線余接 coth x=1/tanh x 双曲線正割 sech x=1/cosh x 双曲線余割 cosech x=1/sinh x双曲線関数と三角関数の間にはsinh ix=i sinx,cosh ix=i cosx,tanh ix=i tanxなどの関係があり,また三角関数と類似した性質をもち,cosh2x−sinh2x=1,sinh(x+y)=sinh x cosh y+cosh x sinh yなどの関係が成り立つ。→双曲面

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「双曲線関数」の意味・わかりやすい解説

双曲線関数
そうきょくせんかんすう
hyperbolic functions

指数関数 ex を用いて定義される次の6つの関数をいう。
三角関数と類似の性質をもつ理由は,三角関数が複素指数関数で表わせるからで,複素変数の立場では,三角関数の同類である。三角関数が円と結びついているように,双曲線関数は双曲線と結びついているので,相対論のような双曲的な幾何では三角関数の代りになる。その他,懸垂線,ロジスティック曲線など,自然科学や社会科学とも,かかわりが深い。

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