加法定理(読み)カホウテイリ(英語表記)addition theorem

デジタル大辞泉 「加法定理」の意味・読み・例文・類語

かほう‐ていり〔カハフ‐〕【加法定理】

関数f(α+β)=Ff(α),f(β)}の関係で表される定理三角関数では、sin(α±β)=sinαcosβ±cosαsinβやcos(α±β)=cosαcosβ∓ sinαsinβなどの定理。→確率の加法定理

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精選版 日本国語大辞典 「加法定理」の意味・読み・例文・類語

かほう‐ていりカハフ‥【加法定理】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 三角関数の一群の定理。次のような等式からなる。複号同順)。
  3. 関数 f(x) の x+y における値 f(x+y) が、f(x) と f(y) とから一定方式で計算される場合の、その方式に対する呼称

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改訂新版 世界大百科事典 「加法定理」の意味・わかりやすい解説

加法定理 (かほうていり)
addition theorem

(1)三角関数の最も基本的な公式に次のものがある。

(Ⅰ)sin(xy)=sin xcosy+cosxsin y

(Ⅱ)cos(xy)=cos x cos y-sinxsin y

(Ⅲ)tanxy)=\(\frac{tan x+tan y}{1-tan x tan y}\)

これらの公式を三角関数の加法定理と呼ぶ。公式(Ⅲ)はtan(xy)をtanx,tanyの関数として表している。このように,一つの関数fx)について,fxy)をfx),fy)の関数として表す式fxy)=Ffx),fy))をfx)の加法定理または加法公式という。sin2x+cos2x=1だから,上の(Ⅰ)は正弦関数の,(Ⅱ)は余弦関数の加法定理といえる。一次関数kxk定数)の加法定理はkxy)=kxky指数関数ekxの加法定理はekxy⁾=ekxe kyとなるが,逆に実数全体で定義された連続関数fx)に対し,加法公式fxy)=fx)+fy)が成り立てばfx)=kxとなり,加法公式fxy)=fxfy)が成り立てばfx)=e kxとなる。多項式Fuvw)に関して,Ffx),fy),fxy))=0が成り立つとき,関数fx)は代数的加法定理をみたすという。楕円関数は代数的加法定理をみたす。

(2)排反事象,すなわちけっして同時には起こらない事象EFがあるとき,EまたはFのいずれかが起こる確率Eの起こる確率とFの起こる確率の和である。確率論ではこのことをpEF)=pE)+pF)と書き,確率の加法定理と呼んでいる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「加法定理」の意味・わかりやすい解説

加法定理
かほうていり

数学において加法定理とよばれているものはいろいろあるが、ここではもっとも一般的なものとして次の二つをあげる。

(1)三角関数の加法定理 次の公式をいう。


(2)確率における加法定理 k個の事象E1,E2,……, Ekがあって、このうちのどの二つも同時におこることはないとする。すなわちE1,……,Ekが排反事象であるとする。このときE1,……, Ekのうちの少なくとも一つがおこるという確率pは、各事象Eiのおこる確率p(Ei)の和に等しい。

  p=p(E1)+p(E2)+……+p(Ek)
これが確率における加法定理である。この定理は古典的な確率論では次のようにして証明される。「全部でN通りの場合があって、どの場合がおこるのも同様に確からしいとする。事象Eiに対応する場合がni通りであるとするとp(Ei)=ni/Nである。一方、E1,……, Ekのうちのどの二つをとっても同時におこることはないから、これらk個のうちの少なくとも一つがおこる場合の数はN=n1+……+nkである。したがって

である」。確率論を公理的に構成するときは、「E1、E2が排反事象であるとき、E1、E2のうちの少なくも一方がおこる確率p(E1∪E2)は、p(E1)とp(E2)の和に等しい」という性質を確率に関する公理と考える。

古屋 茂]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「加法定理」の意味・わかりやすい解説

加法定理
かほうていり
addition theorem

xy に対する関数値を,xy に対する関数値で表現する公式。たとえば指数関数に対する ex+yexey 。具体的な加法定理は,三角関数指数関数ベッセル関数,楕円関数などについて与えられる。以下では正弦・余弦に関するもののみを述べる。2つの角α,βの和の三角関数には,次の諸公式が成り立つ。これらを総称して加法定理という。正弦 sin ,余弦 cos に関して
これらに対して α-β に対する公式を,減法定理ということがある。

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百科事典マイペディア 「加法定理」の意味・わかりやすい解説

加法定理【かほうていり】

(1)一つの関数f(x)につきf(x+y)とf(x),f(y)の間の関係を表す恒等式。たとえばsin(x+y)=sin x cos y+cos x sin y,e(x/)(+/)(y/)=e(x/)e(y/)等。(2)確率の加法定理。〈いくつかの排反事象のどれかが起こる確率は,各事象の起こる確率の和に等しい〉。

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法則の辞典 「加法定理」の解説

加法定理【addition theorem】

三角関数に関する次の定理をいう.

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世界大百科事典(旧版)内の加法定理の言及

【三角関数】より

…三角関数は,最初は直角三角形の一つの鋭角によって定まる辺の長さの比,いわゆる三角比として定義せられ,それが一般の角に拡張された。それらに関して後述の加法定理などの性質や,別の項目で述べられる三角形の正弦定理余弦定理が導かれ,古くから測量問題などに応用された。現代では,三角形という図形的意味とは独立に,数学の研究対象としての地位を確立し,解析学において重要な関数となっている。…

※「加法定理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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