取付け(読み)トリツケ

デジタル大辞泉 「取付け」の意味・読み・例文・類語

とり‐つけ【取(り)付け】

取り付けること。機械器具などを設置すること。「湯沸かし器取り付け」「取り付け料」
いつもその店から買っていること。また、その店。買いつけ。「取り付け酒屋
恐慌などのとき、信用を失った銀行預金者が払い戻しを求めて殺到すること。「取り付け騒ぎ」

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改訂新版 世界大百科事典 「取付け」の意味・わかりやすい解説

取付け (とりつけ)

預金を受け入れている金融機関の窓口に,預金者が預金引出しを求めて一時に殺到する状態。国民経済が平穏に進行しているときは一般大衆の金融機関に対する信用は強固であるが,不況深化ないし企業倒産多発時などにおいて,金融機関とくに小規模な金融機関の経営が不健全ではないかとみなされて,その信用が揺らぎ,預金者は資産の安全を求めて預金引出しに走ることとなり,取付けが起こる。第2次大戦後の日本におけるきわめてまれな事例である豊川信用金庫の取付け(1973年12月)のように,単なる流言から起こることもある。金融機関は資金の効率的運用のために手持現金(支払準備)を切り詰めているので,取付けが起こると中央銀行による貸出しなど他から早急に現金を調達できないかぎり,対応できず休業に陥ることとなりやすい。それが預金者心理を不安にかりたてて他の金融機関の取付けに波及し,金融恐慌へ進むことがある。戦前の日本には小規模銀行が多く,その経営も関係企業と癒着して放漫となり資金固定化の例が多かったことから,ブームのあとの景気後退時によく取付けが起こった。1890年の最初の近代的恐慌時,1900年,14年(北浜銀行の取付け,休業。いわゆる北浜事件),20年の反動恐慌時などであり,20年には当時一流の七十四銀行が激しい取付けに遭遇し,それが各地の銀行動揺に波及した。東京渡辺銀行の休業に端を発した27年の金融恐慌時には,震災手形を多く所持するとみられた京浜の銀行への取付けが激化したが,その最終段階では全国的な無差別の取付けとなり,銀行一般に対する不信に基づく取付けに発展した。戦後は銀行の規模が大きくなり,また当局の保護的な行政もあって金融機関への信用は厚く,取付けの例はまずない。大蔵省日本銀行による検査など銀行経営を監視する体制も整っている。なお,国際間においても取付け状態は起こりえ,1931年のオーストリア最大の銀行クレジット・アンシュタルトのケースが著名である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「取付け」の意味・わかりやすい解説

取付け
とりつけ
run on a bank

一般には債権者が債務者に対し債務の返済を求めること。特に問題になるのは金融恐慌が発生し,銀行預金の引出しが困難になるおそれがある場合に,預金者が銀行に殺到し,預金の引出しを求める場合である。銀行は預金を他に運用しているため場合によっては支払準備に不足をきたし,支払停止となることがあるが,ほとんどは中央銀行の援助によって阻止することができる。しかし銀行は相互に手形の決済などの関係で常に貸借関係をもっているため,一銀行に取付けがあれば容易に他に波及する。このため一般的な取付けが起りそうな状態のときには法令によってモラトリアム (支払猶予) が実施され,銀行の一斉休業となることがある。 1929~32年のアメリカの大恐慌のときは,未曾有の規模の取付けが発生した。日本では 23年の関東大震災,27年の金融恐慌,46年の金融非常措置のときモラトリアムが実施された。

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