証券取引所以外の場で有価証券の売買を行うこと。場外取引ともよばれる。
証券を取引所との関係で区分すると、上場証券と非上場証券とに分けることができる。このうち非上場証券が取引所で売買されることはないから、あえて取引所外取引として扱う意味はない。したがって、ここで対象となるのは上場証券ということになる。ただ、上場証券は取引所において売買されるのが本義であり、それ以外の場で上場証券の取引を認めることは、上場制度の存在意義を否定することにもなりかねない。第二次世界大戦後、取引所再開に先だってGHQ(連合国最高司令部)が提示した「取引三原則」の一つにも「上場銘柄の取引については取引所市場での執行を原則とする」と定められ(取引所集中義務)、これは長く証券取引の基本理念として機能してきた。そこには、上場銘柄の取引所外取引を禁止し、すべての売買注文を取引所市場へ集めることにより需給に厚みをもたせ、公正な価格形成を促進するという意図が強く働いていた。しかし、コンピュータに象徴されるIT(情報技術)の発達は、情報に関する市場効率性を高め、かならずしも取引所市場を経由しなくても公正な価格を発見できるような環境変化をもたらした。この結果、取引所集中義務は1998年(平成10)12月に撤廃され、上場証券の取引所外取引が認められるようになった。
取引所外取引では、公正な売買と投資家保護を図るため、日本証券業協会(日証協)が「上場株券等の取引所金融商品市場外での売買等に関する規則」を定めている。この規則に従い、取引所外取引を行った証券会社は、取引内容を売買成立後5分以内に日証協へ報告しなければならないなどの義務を負う。ただし、取引所内で行われる立会外取引は、取引所外取引の範疇(はんちゅう)には入らない。
上場証券の市場外取引には、大別して機関投資家など法人向けの「ダークプール」(dark pool of liquidity)と、個人も利用可能な「私設取引システム」(PTS:proprietary trading system)とがある。
ダークプールは、高い匿名性が特徴であり、証券会社内部のクロッシング市場(証券会社に集まる売り買いの注文を社内で付き合わせること)の一部として、気配や注文の数量などを公表しない仕組みで運営される。売買注文は証券会社内のコンピュータシステムで電子的に付き合わされ、取引内容が外部からは把握されにくいため、このような名称でよばれる。これは、透明性の高い取引所を「リットプール」(lit pool)や「ライトプール」(light pool)とよぶのに対応した呼称である。利用者にとっては、大口取引であってもマーケットインパクト(自分の取引によって株価に変動が生じること)を回避しながら執行コストを低下させられるなどのメリットがある半面、取引執行の不確実性(約定できるかどうかがわからない)というデメリットもある。ダークプールは導入してから漸増傾向を続け、取引の小口化も進んでいる。
一方、PTSは、民間業者(証券会社)が金融庁の認可を得たうえで開設し、電子情報処理システムを使用して、相対(あいたい)で、おもに取引所の立会時間外に売買注文の付き合せを行う。アメリカでは同種のサービスが定着し、相応の取引シェアを占めるまで拡大しているが、日本ではまだ十分な普及には至っていない。
ただ、今日のように高度に情報化が進展した社会においては、機能面で、従来の組織的な取引所と民間業者が提供する取引システムとを区別する意味が乏しくなっている。証券市場における国際化や機関化(市場で機関投資家のウェイトが高まる現象)が進むにつれ、投資家による効率的な売買執行への要求は強まる傾向にある。そこに多様な取引システムが提供されることは、投資社会に利便性をもたらす半面、市場間競争を一段と加速する形で作用しているのである。
[高橋 元 2018年8月21日]
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