古文真宝(読み)こぶんしんぽう

精選版 日本国語大辞典 「古文真宝」の意味・読み・例文・類語

こぶんしんぽう【古文真宝】

[1] 中国詩文集。二集二〇巻。宋の黄堅撰とされるが未詳。前集一〇巻に漢から宋代までの詩を、後集一〇巻に戦国時代末から宋代までの文を文体別に分類、収録した詩文集。日本でも広く読まれた。古文。
[2] 〘名〙 (形動) ((一)から転じて) かたくるしいこと。まじめくさっていること。また、そのさまや人。
仮名草子・ぬれぼとけ(1671)上「日比われらにいけんせし、古文しんぽう・むいきもの、おこっていけんせしほどに」

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デジタル大辞泉 「古文真宝」の意味・読み・例文・類語

こぶんしんぽう【古文真宝】

中国の詩文集。前後2集各10巻。元の黄堅の編という。漢から宋代までの代表的詩文を集めたもの。前集は詩を詩型で分け、後集は文章を文体で分けている。江戸時代初学者教材として広く読まれた。
[名・形動ナリ]まじめくさって堅苦しいこと。しかつめらしいこと。また、そのさま。
「常は―にかまへし男も、釣り髭に様はかへながら」〈浮・伝来記・四〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「古文真宝」の意味・わかりやすい解説

古文真宝
こぶんしんぽう

中国周代から宋(そう)代に至る古詩、古文の珠玉集。前後集各10巻。編者の黄堅(こうけん)の伝記は明らかでないが、宋末元(げん)初のころの編著であろう。1366年(元の至正26)の鄭本(ていほん)の序に、当時注釈もあり、久しく世に行われていたという。前集は勧学文、五言古風短篇(たんぺん)、同長篇、七言短篇、同長篇、長短句、歌(か)、行(こう)、吟、引、曲の11体217編の詩、後集は辞、賦(ふ)、説、解、序、記、箴(しん)、銘(めい)、文、頌(しょう)、伝、碑、弁(べん)、表、原、論、書の17体67編の文を収める。

 明(みん)の弘治(こうち)本・朝鮮本、また『古文大全』と題する本など、内容編数の異なる諸本もあるが、日本では室町時代に元版の諸儒箋解本(しょじゅせんかいぼん)が翻刻され、五山の学僧青松・万里らの箋釈(せんしゃく)がある。そして江戸時代には榊原玄輔(さかきばらげんぽ)の『前集諺解(げんかい)大成』、林羅山(らざん)・鵜飼石斎(うかいせきさい)の『後集諺解大成』、鈴木益堂の校本も出て、四書や『唐詩選』『文章軌範』とともに、漢詩文の学習に必読書として広く行われ、日本文学中の漢文学の素養は、本書によるところが多い。

[星川清孝]

『星川清孝著『新釈漢文大系9・10 古文真宝前集 上下』『新釈漢文大系16 古文真宝後集』(1963、1967・明治書院)』

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改訂新版 世界大百科事典 「古文真宝」の意味・わかりやすい解説

古文真宝 (こぶんしんぽう)
Gǔ wén zhēn bǎo

中国の詩文の選集。宋末・元初の黄堅の編と伝えられる。通行本は前,後集それぞれ10巻。前集には漢から宋までの古体詩を10体に分類し,後集は戦国から宋までの17体の文章を収める。後集には辞・賦などの韻文を含み,辞・賦・説・解・序・記・箴(しん)・銘・文・頌・伝・碑・弁・表・原・論・書に分けられる。古文を主としているが,李白の〈春夜桃李園に宴するの序〉のような駢文(べんぶん)をまじえる。中国におけるよりも主として日本で流行し,室町時代に伝来して五山の学僧に愛読されて以来江戸時代の初期まで,特に後集がもてはやされた。それ以降は《文章軌範》《唐宋八家文》と併用され,古文学習書における独占的地位にやや衰えが見られるが,林羅山・鵜飼石斎の《古文真宝後集諺解大成》をはじめ,多くの注釈書がある。中国詩文に対する常識を養った書物として重要である。江戸期には堅苦しい人を〈古文真宝〉と呼んだ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「古文真宝」の意味・わかりやすい解説

古文真宝
こぶんしんぽう
Gu-wen zhen-bao

中国の詩文集。宋末元初の黄堅の編。前集 10巻,後集 10巻。前集には漢から南宋までの古体詩を,後集には戦国時代末から北宋までの文を選び,それぞれ詩形別,文体別に分類,編集している。もともと塾などの教科書としてつくられたものであるが,各時代の代表的な詩文を多く収めてあるので,主として唐,宋時代の文を集めた『文章軌範』とともに,元,明にかけて広く流行した。朝鮮,日本にも伝わり,特に日本では室町時代の禅僧の間で愛読され,大量の和刻本,注釈書も刊行されている。

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