改訂新版 世界大百科事典 「同姓不婚」の意味・わかりやすい解説
同姓不婚 (どうせいふこん)
tóng xìng bù hūn
姓が同じである男女の通婚を避けるという中国古来からの原則。〈姓〉という字の意味からして,厳密にいえば,同一祖先から男系の血を分けた者どうしの通婚を忌むということである。この原則は,周時代から始まるとされ,本来は習俗的規範であった。それが制定法として成立するのは,北魏時代(386-534)であり,以後,近代まで続く。中国では,女性は結婚してからも夫の姓に改めないのが一般であるが,それはこの同姓不婚のたてまえに基づくからにほかならない。同姓の通婚を避ける理由として,同姓の男女は本来同一物であり,その交配から新しいものは生じないということ,つまり子孫の断絶に対する恐れであるとの説が有力だが,生理的理由のほかに,同じ男系の男女どうしの肉体的交合は不吉であるという道徳的不倫感が根底にあり,それは近親相姦に対する不倫感にも通ずる。なお革命後の中国婚姻法では,8等親間の同族結婚を禁止するだけで,同姓不婚の規定は見えない。
→婚姻
執筆者:冨谷 至
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