族譜(読み)ゾクフ

デジタル大辞泉 「族譜」の意味・読み・例文・類語

ぞく‐ふ【族譜】

一族系譜系図家譜

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精選版 日本国語大辞典 「族譜」の意味・読み・例文・類語

ぞく‐ふ【族譜】

  1. 〘 名詞 〙 一族の系譜。系図。家譜。
    1. [初出の実例]「学文の事を論する次手に族譜を考見侍れは」(出典:仮名草子・智恵鑑(1660)七)
    2. 「現に其族譜(ゾクフ)大洪水の折にノアが乗込し筥船の中に在しといふ証ありといひけり」(出典:春迺屋漫筆(1891)〈坪内逍遙〉をかし)
    3. [その他の文献]〔南史‐賈希鏡伝〕

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改訂新版 世界大百科事典 「族譜」の意味・わかりやすい解説

族譜 (ぞくふ)

中国の宗族(そうぞく)の間で作成された家系に関する記録。宗譜,家譜,世譜,家乗などともいわれる。時期的には貴族制時代の六朝・隋・唐代に最初の盛行を見るが,これは家系の良否が一族の政治的社会的地位を決定したからである。そのため各王朝も官僚選出にあたって,国家的な修譜を行ったりした。

 しかし唐・宋の変革によって門閥貴族が没落すると,政治的意味あいを持つ族譜の編纂は廃れてしまう。代わって宋以後には,11世紀の欧陽修《欧陽氏譜図》と蘇洵《蘇氏族譜》を初発として,新支配層となった地主・士大夫の手で族譜は盛んに作成された。これらに特徴的なことは,同族意識を持たせるための祠堂記・祭法,相互扶助のための族田に関する規定,族内統制のための族約・家訓祖先の墓誌銘・芸文等が,新しく盛りこまれていることである。門閥の消滅した宋以後の社会では,地主の秩序維持志向が,族的結合の一手段として族譜の普及をもたらしたといえよう。
執筆者:

中国の制を範として朝鮮でも族譜が編纂されるが,朝鮮で刊行された族譜で現存する最古のものは15世紀までさかのぼる。李朝中期に両班ヤンバン)のあいだで族譜は急速に普及するが,その背景には,父系血縁観念の浸透とこれに伴う階級党派の形成,祖先祭祀・相続などの制度の確立があった。姓氏と本貫(一族のおこったとされる地)を同じくする父系親族のうち,有力な人物を派祖とする子孫によって25~30年ごとに編纂される派譜と,すべての派を網羅した大同譜とがある。族譜には,序文につづき,まず一族中傑出した人物の事績や墓碑文,上世代祖先の墓や祖廟の所在図が記載される。その後に始祖から現世代に至るすべての男性成員について名・字・号,出生年と没年月日,官職の経歴,墓所が,配偶者についても姓と本貫などが記される。ただし女性の場合は本人の名は記されず,夫の姓名・本貫と子の名が記されるにすぎない。族譜は祖先の権勢や徳望を具体的に記録して一族の社会的威勢を根拠づけるものであるため,その編纂にはどの氏族もとくに力を注ぎ,有力な氏族の変遷を知る史料として貴重であるが,ときには改ざんされたり,売買もされた。近年になって韓国では,ハングル表記や写真を採り入れた族譜も登場している。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「族譜」の意味・わかりやすい解説

族譜
ぞくふ

一族の系譜を記した家系譜。中国の後漢(ごかん)時代に王室の系譜を記録したのがその嚆矢(こうし)とされる。朝鮮でも高麗(こうらい)時代から編纂(へんさん)されたといわれるが、現存する最古の族譜としては、15世紀につくられた安東権氏の「成化譜」がある。族譜にはまず編纂時の序文や、先祖・顕祖の事跡、行状記、墓碑文、顕祖の墓や祖廟(そびょう)の所在図などが記載され、始祖から現世代に至る一族のすべての男性成員の名、字(あざな)、号、諡号(しごう)、官職、生没年月日、墓の所在地、配偶者の姓と本貫(ほんがん)などが記載される。ただし、女の名は記載されず、嫁ぐと夫の姓名・本貫と、その父や顕祖、子の名が記されるだけの、徹底した男系中心の記録である。族譜は現代でこそだれでもつくってもてるが、封建社会では両班(ヤンバン)氏族しかもつことができず、いわば両班の証書のようなもので、これがないと常民に転落、兵役なども負わされることから、李朝(りちょう)中期以後、族譜編纂事業に一段と拍車がかかった。族譜には、始祖から現世代に至るまでの一族を網羅した大同譜と、有力な人物を派祖とする一派を単位として編纂される派譜とがある。大同譜の編纂は大掛りで、大氏族の場合ほとんど不可能に近く、したがって30~40年ごとに編纂される派譜が主であるが、始祖までの系譜と各派間の系統は明らかにされなければならない。族譜が両班の表徴といわれるだけに、両班志向の強い社会的風潮のなかで、いまも編纂事業は盛んに行われ、写真を入れるなどさまざまなくふうも試みられている。

[尹 學 準]

『尹學準著『オンドル夜話』(中公新書)』

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百科事典マイペディア 「族譜」の意味・わかりやすい解説

族譜【ぞくふ】

中国や朝鮮の家系に関する記録。中国では六朝の九品官人法の採用により,系譜が官吏任用の際の重要な参考とされたので,各氏族はその撰集に関心をもち多く作られた。隋・唐の間には勅撰氏族譜が作られ,図譜局で統制した。宋〜清代には士大夫間の氏族的再結合を図るため,族譜の作成が一般に流行。朝鮮では李朝中期から両班(ヤンバン)社会で広まり,父系血縁に基づく〈同姓同本〉(姓と本貫を同じくするとの意)のうち,入郷祖や著名人物を始派祖とする門中ごとに,ほぼ一世代間隔で族譜が編纂される。全ての男性成員について名・字・号,生没年月日,官位経歴,墓所,妻の姓と本貫が記されるが,女性の場合,夫の姓名と本貫,息子の名,娘の数のみで,本人の名は記載されない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「族譜」の意味・わかりやすい解説

族譜
ぞくふ
zu-pu; tsu-p`u

中国およびその文化圏でつくられる系譜中心の同族の記録。宗譜ともいう。六朝時代,門閥制が発達すると各氏族は競って氏譜,家伝などをつくり,唐代にかけては官撰の大部な氏族志の類までできた。宋代以降地主層を中心に宗族結合が新しい形をとるにつれ,蘇洵の『蘇氏族譜』,欧陽修の『欧陽氏譜図』以下近世的族譜作成が一般化した。輩行関係を明示した系図のほか,墓記,祭儀,義田,義学,家規,宗約など宗族生活に関する諸項が盛込まれている。今日でも台湾や華僑社会では編纂が跡を絶たない。

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普及版 字通 「族譜」の読み・字形・画数・意味

【族譜】ぞくふ

同族の系譜。

字通「族」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の族譜の言及

【朝鮮】より

…門中の始祖から代々その後継ぎとなってきた家(長男の系統)を宗家(チョンガchongga),その当主を宗孫(チョンソンchongson)と呼ぶが,これは門中の象徴的中心である。
[本貫,族譜,門中]
 出自(同一の祖先の子孫であること)を示すのが姓と本貫である。朝鮮の姓は約260種類と限られているが,多くの姓はさらに系統によっていくつもの氏族に分かれている。…

※「族譜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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