人の名誉を奪うことを内容とする刑罰。旧刑法が付加刑として規定していた剝奪公権,停止公権はその例である(10条1,2号)。そこでいう公権としては例えば,官吏となる権利,勲章位等を有する権利,裁判所の証人となる権利などがあった。現行刑法はこのようなものを認めていないが,一定の刑に処せられたことの付随的な効果として,公民権に影響がある。例えば,禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで,または執行を受けることがなくなるまでの者は,ひろく国家公務員または地方公務員に任命されえず,在職中これに該当することになった場合は失職する(国家公務員法38条,地方公務員法11条等)。学校の校長,教員,司法書士などについても同じような規定がある(学校教員法9条等)。また,禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまでの者,および禁錮以上の刑に処せられ,その執行を受けることがなくなるまでの者(法律の定めるところにより行われる選挙,投票および国民審査に関する犯罪以外の犯罪による刑の執行猶予中の者を除く)は,公職選挙についての選挙権,被選挙権を有しない(公職選挙法11条)。
執筆者:林 幹人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
犯罪者に対する制裁として、その名誉を剥奪(はくだつ)することを内容とする刑罰。中世ヨーロッパでは、この意味での名誉刑として、「石運び」「犬運び」といった犯罪者に辱しめを与える刑罰が存在した。今日では、このような名誉刑はみられず、名誉刑とは「刑」(主刑または付加刑)として一定の資格を制限する場合をいう。各種の資格制限が、事実上犯罪者の名誉を害する効果を伴うからである。この意味の名誉刑は、諸外国および旧日本刑法にはその例があるが、現行刑法は認めていない。ただ、刑法以外の法令には、一定の刑に処せられた者に対する各種の資格制限条項がある。たとえば、一定の選挙犯罪に対し選挙権や被選挙権を停止するいわゆる「公民権停止」制度、一定の刑に処せられた者に対する職業禁止制度、などがそれである。
[名和鐵郎]
…現行刑法(1907公布)は,刑の種類をはるかに制限し,徒刑(とけい),流刑(いずれも,犯罪人を離島などの遠隔地に送致し,その地において有期または無期間滞在させる刑。徒刑は〈定役〉に服すが,流刑は〈定役〉に服さない)を認めず,また,剝奪公権,停止公権という名誉刑を廃止したのである。 現在の諸国で認められている刑罰の種類は,大別すると,生命刑,自由刑,財産刑,名誉刑に分けることができる。…
※「名誉刑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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