日本大百科全書(ニッポニカ) 「呉与弼」の意味・わかりやすい解説
呉与弼
ごよひつ
(1391―1469)
中国、明(みん)代初期の朱子学者。字(あざな)は子傅(しふ)、号は康斎。江西省崇仁県の人。皇位継承をめぐって起こった内乱、靖難(せいなん)の変(1399~1402)のおりの思想弾圧の結果、沈滞した明初の思想界のなかで独力で朱子学を修めた。忠実に朱子学を実践しようとした典型的な朱子後学の一人。理論的新見はまったくないが、生きた朱子学を提示し、陳白沙(ちんはくさ)(献章)、胡敬斎(居仁)、婁一斎(ろういっさい)(諒(りょう)、1422―1491)を門人に得て思想界に活を入れた功績は大きい。日々の学道の記録である主著『日録』は中国、日本でよく読まれた。
[田公平 2016年2月17日]
『田公平著「呉康斎」(『朱子学大系 第10巻 朱子の後継 上』所収・1976・明徳出版社)』