和文と漢文との両面の要素をもつ文体。鎌倉時代以降の『平家物語』『太平記』等の軍記物や『海道記』『東関紀行』等の紀行文にみられるものを代表的なものとする文体。平安時代の和文・漢文訓読文の両様の性格を取り入れ、当時の口語や武士詞(ことば)を交えてなったもの。和文のもつ情緒的なやわらかみに、漢文特有の力強さ、明確な論理性等が加味され、武家の台頭した当時の社会風潮によくあっていた。簡潔で、韻律的な文章となり、後の時代の人々にも名文として迎え入れられたものが多い。平安時代後期に、漢文の色彩の濃い『三宝絵詞(さんぼうえことば)』『打聞集(うちぎきしゅう)』『今昔物語集』のような説話が文章として残され、和文を基調とした『大鏡』などのなかにも漢文の強い影響がみいだされる。これらを経て鎌倉時代の和漢混交文はできあがっている。鎌倉時代以降は、和漢混交文が文章の主流となり、謡曲、物語類をはじめ、江戸時代の国学者たちの記した、いわゆる擬古文(ぎこぶん)においても和漢混交文から影響されたものは大きい。
[山口明穂]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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