品質表示(読み)ひんしつひょうじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「品質表示」の意味・わかりやすい解説

品質表示
ひんしつひょうじ

消費者が商品、サービスを選択、購入するためには、その機能、効用などが理解できるような表示がされている必要がある。この目的のために行われるのが品質表示であり、表示される内容は、そのものの機能、効用とそれらの基礎となる素材、組成が中心となる。表示は、商品やサービスの選択に誤りが生じないよう適正に行われる必要があるから、不当表示の規制一体となって行われる。

 品質表示は古代エジプト時代から、文字、マークをつける方法で行われた。マークは一定の品質保証を示し、たとえば、中世ドイツのニュルンベルクの産品には「N」のマークが付され、高品質品として認められており、室町時代の日本でも、京都の酒屋柳屋は六星紋を付してほかの酒との区別を行った。マークによる品質保証の表示が発達したのが、商標登録制度であり、他人の使用を法律的に排除する商標を付することによって、信用を基にした品質表示となっている。

 しかし、商品などが多くの企業の手で大量に生産されるようになると、個々の企業の信用による表示では粗悪品の発生防止には不十分なので、社会的に一定水準の品質を確保するため、JISJASなどの国家的品質基準が定められ、この基準に適合したことをマークで示すようになる。また、商品の組成や機能などが複雑になると、法律によって個別の商品の商品本体、容器、包装などに素材や機能などを文字、マークで表示することを義務づけ、不当表示、不表示を処罰するようになる。適正な選択、使用を確保して、誤った使用による社会的混乱を避けるためである。食品衛生法、薬事法、電気用品安全法、家庭用品品質表示法割賦販売法などの表示の義務づけがそれである。

 また、不当表示の取締りについては、1962年(昭和37)に「不当景品類及び不当表示防止法」が制定されて、不当表示の排除、是正ができるようになった。また業界団体が商品などにつき表示すべき事項、不当となる表示を定める規約を締結し、品質表示の適正化が図れるようになっており、自動車、不動産、牛乳など多くの商品でこの規約が設定されている。

[植木邦之]

『植木邦之著『判・審決例からみた不当表示法』(1996・商事法務研究会)』『公正取引委員会編『不当表示と過大景品の規制』(1998・公正取引協会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「品質表示」の意味・わかりやすい解説

品質表示 (ひんしつひょうじ)

消費者が商品を購入するときには,商品がどのようなものかについての認識と,価格その他の取引条件とを勘案して意思決定を行う。この消費者の商品認識に資するべく,事業者が主として商品と一体のかたちで提供する情報が,広義の品質表示である。この意味での品質表示がつねに適正であるとは限らないことから,消費者の利益を保護するための公的規制が行われてきている。そのうち比較的古くから行われているものが,事業者による品質保証の意味をもつ商標の不正使用を排除することを目的とする登録商標制度である。また,商品の品質そのものに対する規制としての規格制度には,規格合格品にそのことを表示するむねが盛り込まれているのがふつうであり,日本におけるJISマーク,JASマークの使用はその一例であるが,これも品質表示に関する制度の一つである。しかし商品の複雑化,多様化とともに消費者はますます詳細な情報を要求するようになり,それにつれて品質表示の虚偽や情報不足がますます大きな問題となっており,品質表示の義務づけや不当表示の排除にかかわる制度が各国近年著しく強化されている。

 日本では1960年に起きた〈にせ牛かん事件〉をきっかけとして,62年〈不当景品類及び不当表示防止法〉(景表法),〈家庭用品品質表示法〉の2法が制定され,この種の制度の本格的な成立をみた。景表法は,公正取引委員会による不当表示の取締りのほか,表示に関する業者の申合せとしての公正競争規約の実施の道を開き,後者は多くの家庭用品について,業者が通産省の定める型式に従って適正な品質表示を行うことを義務づけている。この2法を中心に食品衛生法,薬事法,電気用品取締法,割賦販売法など多くの法令が,消費者取引のほぼ全面にわたって品質表示の適正化をはかっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「品質表示」の意味・わかりやすい解説

品質表示
ひんしつひょうじ
quality indication

商品検査によって品質の評価の結果を表示したもの。普通,公定の規格に基づいて官公立あるいはこれに準じる公正な第三者機関が行い,商品の品質,数量,包装など,市場取引に必要な事項を証明,表示する。商標と銘柄,肥料の保証票のような明細標示票,農林物資の1等,2等というような格表示票,検査機関の検査に合格したことを示す証票,性能,成分,用法などを示す品質表示票,日本の工業標準化法による JISマークのような規格表示マークなどがある。品質表示は商品の代替性を増し,取引の公正円滑をはかり,品質による価格差の決定基準を与え,生産者には品質の向上を促し,買手には合理的で経済的選択を可能にする,などを目的としている。

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