日本大百科全書(ニッポニカ) 「嘉島」の意味・わかりやすい解説
嘉島(町)
かしま
熊本県中部、上益城郡(かみましきぐん)にある町。1969年(昭和44)町制施行。国道266号、445号が通じ、九州自動車道の御船(みふね)インターチェンジも近い。町域は段丘礫(れき)層からなる標高30メートル前後の東端の台地を除けば、ほとんど沖積低地からなり、加勢(かせ)川、御船川、緑川によって熊本市、御船町と境されている。湛水(たんすい)地帯が広いだけに、米質は悪く、その弱点を増収と小規模な養鶏で補ってきた。また、圃場(ほじょう)整備、土地改良事業によって、従来、自然堤防上だけに限られていた野菜栽培を水田裏作として定着させ、遅れていた熊本市南郊の宅地化を可能にさせている。現在は米、麦のほか、大豆栽培などが盛ん。台地には、カキワラ貝塚(縄文後期)、上官塚(じょうかんづか)(古墳後期)、井寺古墳などがあり、縄文時代に現沖積低地が海域であったこと、台地面が古代人の生活の場であったことをしのばせる。なかでも国指定史跡である井寺古墳は、石室全体に直弧文(ちょっこもん)の施された装飾古墳として有名である。六嘉神社(ろくかじんじゃ)例祭に舞われる獅子舞(ししまい)(県指定無形民俗文化財)は、五穀豊穣(ほうじょう)を祈願する舞である。面積16.65平方キロメートル、人口9547(2020)。
[山口守人]
〔2016年熊本地震〕2016年の熊本地震では、4月14日21時26分の地震で町内上島で震度6弱、4月16日1時25分の地震では同じく上島で震度6強を観測するなど大きな揺れに見舞われた。この地震による町内の被害は、関連死を含め死者5名(うち、警察の検視によって確認された死者は3名)、重傷者11名、住家全壊234棟、公共建物の損壊14棟にのぼり、罹災世帯数は955を数えている(平成30年5月11日『平成28(2016)年熊本地震等に係る被害状況について【第272報】』熊本県危機管理防災課ほか)。
[編集部]