井寺古墳(読み)いでらこふん

精選版 日本国語大辞典 「井寺古墳」の意味・読み・例文・類語

いでら‐こふん ゐでら‥【井寺古墳】

熊本県上益城郡嘉島町井寺にある古墳時代後期に属する円墳。安政四年(一八五七発見石室内に線刻と彩色文様をもつ装飾古墳

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日本歴史地名大系 「井寺古墳」の解説

井寺古墳
いてらこふん

[現在地名]嘉島町井寺 富屋敷

井寺集落の背後の丘陵上にある装飾古墳。安政四年(一八五七)五月一三日の地震により封土の一部が崩壊し、発見された。石室内の奥壁寄りの一区に鏡と直刀、左右の二区に人骨があったというが、明治三四、五年(一九〇一、〇二)頃盗掘され、直刀四本が残るにすぎない。大正五、六年(一九一六、一七)にかけて熊本県内の装飾古墳の実測調査が行われ、その成果が「肥後に於ける装飾のある古墳及横穴」に発表され、当古墳の特異な装飾文様は「直弧文」と命名された。昭和三〇年代には石室実測図が作成され、昭和五七年(一九八二)墳丘の形状と古墳の範囲を確認するため墳丘調査が行われた。古墳は直径三八メートル、高さ五・五メートルの円墳で、墳丘に阿蘇溶結凝灰岩による葺石をもち、周溝はない。

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国指定史跡ガイド 「井寺古墳」の解説

いでらこふん【井寺古墳】


熊本県上益城(かみましき)郡嘉島町井手にある古墳。熊本平野の東端、井寺集落の背後の丘陵南西斜面(標高約21m)に所在する。1921年(大正10)に5世紀の貴重な装飾古墳として国の史跡に指定。石室は西に向かって開口する横穴式石室で、奥行き2.94m、幅2.47m、天井までの高さ3.08m、その前に長さ1.08m、幅0.56mの羨門(せんもん)がある。石室は、阿蘇溶岩を煉瓦状に整えた切り石を積み上げ、天井石は内面を長楕円形に抉(えぐ)った巨石を用いている。石障の内壁とその上面、羨道(せんどう)の両側壁、入り口の両袖石、石梁(せきりょう)の表面などには直線の周囲をさまざまな弧線で囲み、赤・白・青・緑の4色で塗り分けられた文様が描かれているが、直弧文では最も優れたものといわれ、国の重要文化財にも指定されている。熊本市立博物館に鉄刀4本を保管。JR鹿児島本線ほか熊本駅の熊本交通センターから熊本バス「井寺」下車、徒歩約5分。

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百科事典マイペディア 「井寺古墳」の意味・わかりやすい解説

井寺古墳【いでらこふん】

熊本県上益城郡嘉島町井寺にある円墳(史跡)。阿蘇溶岩の切石持送りにした穹窿(きゅうりゅう)状の横穴式石室があり,内部板石に直弧文,同心円文などの彩色装飾が見られる。
→関連項目嘉島[町]装飾古墳

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世界大百科事典(旧版)内の井寺古墳の言及

【装飾古墳】より

…これらと前後して,横穴式石室の内部に安置場所を囲んで方形に立てめぐらした石障その他に直弧文を彫刻したものが現れた(石室)。これにも熊本県長砂連(ながざれ)古墳のように,直弧文を浮彫したものと,熊本県井寺(いでら)古墳のように,直弧文を線刻したものとがある。後者には同心円の文様もまじえているが,熊本県千金甲(せごんこう)1号墳では,同心円と靫(ゆき)とを用い,千金甲3号墳では,石障ではなく,石屋形(いしやかた)(石室奥壁に接して組み立てられた安置施設)に同心円,靫,大刀(たち),舟などを線刻したものに変化している。…

※「井寺古墳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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