酸化物イオンO2-あるいはプロトンH+導電性の無機系固体酸化物を電解質に用い、高温で運転される全固体形燃料電池。英語の頭文字をとってSOFCと略称する。O2-イオン導電性電解質にはイットリアY2O3を8~10モル%添加した立方晶安定化ジルコニアZrO2の薄膜が用いられる。またH+イオン導電性電解質にはストロンチウムセリウム酸化物SrCeO3やバリウムセリウム酸化物BaCeO3を母体とするペロブスカイト形酸化物がよく知られている。
O2-イオン導電性電解質形燃料電池では、負極にニッケルジルコニアサーメットを、正極にはストロンチウムドープのランタンマンガン酸化物La1-xSrxMnO3(x=0.1~0.2)多孔体を、そしてインタコネクタにはアルカリ土類金属ドープのランタンクロム酸化物La0.9Sr0.1CrO3やLaCr0.9Mg0.1O3を用いて電池スタックが構成されている。平板形もあるが、多孔性円筒状の支持管を兼ねた正極上を電解質と負極の各薄層で順次覆い、その単電池の一端のみを固定してスタック化した、熱応力のかからない円筒形が開発されている。支持管の内側に空気(酸素)を、外側に天然ガスなどを導入して水蒸気改質し、燃料ガスとする。この燃料電池の電極反応は以下のように示され、電解質中をO2-イオンが移動して反応が進む。発電効率は約45%であるが、800~1000℃で運転されるので排熱を有効利用すればエネルギー効率を約60%とすることができる。
(負極)
H2+O2-―→H2O+2e-
(正極)
0.5O2+2e-―→O2-
水素や水蒸気の存在下でH+イオン導電性を示すバリウムセリウム酸化物のCe(セリウム)の一部をSm(サマリウム)で置換したBaCe0.85Sm0.15O3-δを電解質に用い、また白金電極を用いた水素‐空気燃料電池では、700℃以上で運転可能であり、大きな電気出力が得られている。なお負極には多孔性ニッケルを、正極にはLa1-xMxCoO3やLa1-xMxMnO3(M=Ca,Sr,0<x<0.6)などを使用することができる。電極反応は次のように進む。
(負極)
H2―→2H++2e-
(正極)
0.5O2+2H++2e-―→H2O
電解質にO2-イオン導電性酸化物を用いると、負極に反応生成物の水蒸気が排出され、燃料ガスが薄められてしまう。これに対しH+イオン導電性酸化物を用いると、H+イオンが電解質中を正極へ移行して水蒸気を生成するため、燃料ガスが希釈されることがなく、循環再利用できる利点がある。また燃料にエタンを用いると負極排ガス中には水素、エチレン、メタンが含まれてくる。このことはエタンが脱水素反応してエチレンになることであり、発電と同時にケミカル・コ・ジェネレーションを行うことができるという特徴がある。
[浅野 満]
『電気学会燃料電池運転性調査専門委員会編『燃料電池発電』(1994・コロナ社)』▽『田川博章著『固体酸化物燃料電池と地球環境』(1998・アグネ承風社)』▽『小久見善八編著『電気化学』(2000・オーム社)』▽『池田宏之助編著『燃料電池のすべて』(2001・日本実業出版社)』▽『『新型電池の材料化学 季刊化学総説No.49』(2001・学会出版センター)』▽『電気化学会編『電気化学便覧』(2000・丸善)』▽『電池便覧編集委員会編『電池便覧』(2001・丸善)』▽『『燃料電池の開発と材料――開発動向と特許展開』(2002・シーエムシー出版)』▽『電気学会燃料電池発電次世代システム技術調査専門委員会編『燃料電池の技術』(2002・オーム社)』
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