国債破棄ともいう。国家がその負担する公債の利払いおよび償還の義務の一部または全部を履行しないことをいう。一般に,公債発行によって財政資金が調達されても,その元利払いは将来の税等の経常収入によって負担されねばならない。国家がその負担を免れるために,非常の財政措置としてその義務を履行しないのが国家破産である。たとえば,戦争等のために巨額の公債発行がなされた場合,戦後もながい期間に重い公債費の負担がおしかかってくる。財政事情等からそれに耐えられないときに,このような措置がとられることになる。公然たる国家破産は,1918年に帝政ロシア公債について行われたのが顕著な事例であり,革命による政権の交代を背景にしている。しかし,こうした公然たる国家破産はまれで,むしろ〈かくれた〉国家破産が行われてきた。つまり,インフレーションの過程を通じて,確定債務である公債の元利額の実質上の減価が生じ,国家は公債費のための財政負担を大きく免れえたのである。第1次大戦後のドイツ,第2次大戦後の日本をふくむ敗戦諸国では,この〈かくれた〉国家破産によって,公然たる国家破産なしに,巨額の戦争公債を事実上償却してしまったのである。
執筆者:高橋 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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