改訂新版 世界大百科事典 「国際社会保障協会」の意味・わかりやすい解説
国際社会保障協会 (こくさいしゃかいほしょうきょうかい)
International Social Security Association
略してISSA(アイエスエスエー,イッサ)ともいう。諸国の社会保障関係の中央機関を会員とする国際団体でジュネーブに本部をおく。前身は1927年にブリュッセルで結成された諸国相互扶助及疾病金庫国際会議(1937年に国際社会保険会議に改名)であって,第2次大戦後の47年に第8回総会(ジュネーブ)で国際社会保障協会に組織替えがなされた。いまでは社会保障の全部門をカバーし,世界の東西・南北の別なく社会保障関係機関を会員に擁し,77年の第19回総会(マドリード)では創立50周年を祝った。1927年のILO総会が疾病保険条約を採択したことが契機になってこの協会の前身が生まれたこともあって,ISSAの事務局は当初から国際労働事務局(ILO)の外局の形をとり,事務局長にはILO職員が選出されてきた。3年ごとに開かれる総会は〈社会保障の世界議会〉の観がある。ISSAの活動は,(1)10以上の専門別委員会(医療疾病給付,年金,保険数理など)による社会保障の技術的検討,(2)地域活動(アフリカ,アメリカ(大陸),アジア・オセアニア,ヨーロッパ),(3)調査研究と資料サービスが主である。日本からは社会保険庁をはじめ多くの関係団体が加盟している。社会保障はいまではすべての開発途上国でも現実の存在になったが,その恩恵が一部の人々,ことに近代部門に働く人々に限られがちなことは問題である。これは適用範囲の拡張よりも,給付の改善が先行するためであって,その結果〈社会保障の特権化と階層化〉をきたしている国も多い。ISSAがこの種の問題にとかく関心がうすいのは,その構成団体の性格からくるものと思われる。
執筆者:高橋 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報