中等教育課程(中学校・高等学校に相当)の生徒が参加して、科学技術に関する発想や知識、問題解決の能力などを競う国際的なコンテストの総称。知のオリンピックともよばれている。科学的な才能に恵まれた子どもを発掘し、その才能を育む機会を与えることを目的に、対象分野ごとに、参加国の国内大会を経て選ばれた代表選手を集めて国際大会が開かれている。広く認知されているものを開設年次順に示すと、国際数学オリンピックInternational Mathematical Olympiad(IMO、1959)、国際物理オリンピックInternational Physics Olympiad(IPhO、1967)、国際化学オリンピックInternational Chemistry Olympiad(IChO、1968)、国際情報オリンピックInternational Olympiad in Informatics(IOI、1989)、国際生物学オリンピックInternational Biology Olympiad(IBO、1990)、国際哲学オリンピックInternational Philosophy Olympiad(IPO、1993)、国際天文学オリンピックInternational Astronomy Olympiad(IAO、1996)、国際地理オリンピックInternational Geography Olympiad(iGeo、1996)、国際言語学オリンピックInternational Linguistics Olympiad(IOL、2003)、国際地学オリンピックInternational Earth Science Olympiad(IESO、2007)、国際天文学・天体物理学オリンピックInternational Olympiad on Astronomy and Astrophysics(IOAA、2007)などがあり、それぞれが毎回開催国をかえて行われている。
各国際大会は、理論問題試験のほか、対象分野の特性に応じて実技や実験なども課されて、それらの結果に基づいて成績が計算され、代表選手それぞれの成績が公表される。そのうえで、参加者の半数以上の者にメダル(金・銀・銅)が授与される。各メダルは、成績の上位から順に人数比がほぼ1:2:3になるように与えられる。スポーツのオリンピック同様に、このメダル数に基づいた国別ランキングが示されるのが常である。また、各国際大会では、成績を競うことに加えて、開催地独自の文化を体験するイベントや、スポーツやゲームなどを通じての代表選手同士の国際交流、さらには代表選手に随行する教育関係者間の国際交流を図るプログラムも組まれている。
日本は1990年(平成2)に国際数学オリンピックに初参加したのを皮切りに、2023年(令和5)までに多くの国際科学オリンピックに参加し、代表選手を派遣するに至っている。また、日本でも国際科学オリンピックが開催されてきている。開催された国際科学オリンピック名と開催年次を示すと、数学(2003、2023)、物理(2023)、化学(2010、2021)、情報(2018)、生物学(2009、2020)、哲学(2002)、地理(2013)、地学(2016)である(2020年、2021年の大会は新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の感染拡大のため、リモート開催)。
国際科学オリンピックへの代表選手を選抜するための国内大会の開催や代表選手育成の諸活動は、それぞれの分野ごとにつくられた組織(多くは当該科学オリンピックの日本委員会とよばれている)によって行われている。その活動は、国からの補助もあり、企業などの協賛も一部得られているものの、当該分野の研究者・教育者によるボランティア活動によって支えられているのが現状である。
2007年(平成19)には、日本の将来を担う子どもたちの理科や数学の才能をみいだし、その能力を伸ばす取り組みとして国際科学オリンピックへの参加を盛り上げるため、ノーベル賞受賞者や学識経験者、財界人などによって日本科学オリンピック推進委員会が組織された。そして、各国際科学オリンピックや国内選抜大会などに関する広報活動や運営支援を行うとともに、子どもや教育関係者を対象とした科学関連のシンポジウムや体験講座などを主催した。さらに2018年には、公益財団法人数学オリンピック財団、公益社団法人日本化学会(化学グランプリ・オリンピック委員会)、公益財団法人日本科学技術振興財団(国際生物学オリンピック日本委員会)、公益社団法人物理オリンピック日本委員会、一般社団法人情報オリンピック日本委員会、特定非営利活動法人地学オリンピック日本委員会、国際地理オリンピック日本委員会をメンバーとして、日本科学オリンピック委員会が設立された。国立研究開発法人科学技術振興機構内に事務局を置き、科学技術の将来を見据えた異分野協働と産学官連携によるオールジャパンの科学技術人材育成を推進することを目ざして、すべての教科が一体となった科学オリンピック活動の普及・広報を図り、協賛・支援の輪を広げるための活動を行っている。
[筧 捷彦 2024年7月18日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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