新型コロナウイルス感染症(読み)シンガタコロナウイルスカンセンショウ(英語表記)COVID-19

翻訳|COVID-19

デジタル大辞泉 の解説

しんがたコロナウイルス‐かんせんしょう〔‐カンセンシヤウ〕【新型コロナウイルス感染症】

COVID-19

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共同通信ニュース用語解説 の解説

新型コロナウイルス感染症

2019年12月に中国・武漢で最初の症例が確認され、その後、世界的に大流行した。せきや喉の痛み、高熱、味覚障害などに加え、高齢者や基礎疾患のある人は特に重い肺炎で死亡する恐れがある。日本では20年1月に初の感染者を確認。流行を抑えるために政府は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による行動抑制や、マスク着用などの感染対策を求め、21年からワクチンの無料接種を進めた。世界保健機関(WHO)によると、今年5月時点の全世界の死者数は700万人超で、うち米国が120万人を超え最多。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

新型コロナウイルス感染症
しんがたころなういるすかんせんしょう
COVID-19

新型コロナウイルスSARS-CoV-2(サーズコブツー))がヒトに感染することによって発症する感染症。2019年(令和1)に初めて発生が確認された新興感染症であり、世界中に広がるパンデミックに至った。当初、感染症法上では「指定感染症」とされ、その後2021年(令和3)2月13日には「新型インフルエンザ等感染症」とされた。法的には、感染者に対しての隔離措置や、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言などの公衆衛生対策が行われた。しだいに有効な治療薬やワクチンが得られたことや、ウイルスの変異による病原性の低下などが考慮され、2023年5月8日より感染症法上は季節性インフルエンザと同じ「5類感染症」とされた。それにより、前述のような人の自由を制限するような公衆衛生対策は法的にも行われなくなった。しかし、今後もウイルスが変異するなどして、感染を広げる伝播(でんぱ)力がより強く、また、免疫をもっている人でも感染する性質を獲得するおそれは当面継続する可能性がある。社会としてこのウイルスとどのように共存し、かつ脆弱(ぜいじゃく)な高齢者や基礎疾患のある人を守るかは今後においても課題である。

[和田耕治 2024年3月19日]

発生の経緯

2019年12月31日、中国・湖北(こほく)省武漢(ぶかん)市で原因不明の肺炎患者が発生したことが報告された。その後2020年1月7日には新型のコロナウイルスが分離されたことが報告され、日本では2月1日に施行された政令において、ウイルスおよび疾患の法令上の公式名称がそれぞれ「新型コロナウイルス」「新型コロナウイルス感染症」と定められた。この新型ウイルスは2002(平成14)~2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS(サーズ))や中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS(マーズ))の病原体と同じコロナウイルスに分類される動物由来のウイルスであることが判明し、2020年2月11日にはウイルス名が国際的に「SARS-CoV-2」と命名された。宿主動物とよばれる、当初ウイルスを保持していた動物はコウモリと考えられているが、どういう形でヒトに広がるようになったかなど、いまだ不明な点も多い。コウモリからヒトへの感染に至るまでに中間宿主となった生物がいるかもしれないが、特定されていない。

 世界保健機関(WHO)は、このウイルスに感染した場合の疾患名をcoronavirus infectious disease, emerged in 2019に由来して「COVID-19(コビッドナインティーン)」と命名した。なお、コロナウイルスは電子顕微鏡で見ると王冠のような形に見えることから、ギリシア語で王冠を意味する「コロナ」という名前がついている(本稿では、以下「新型コロナウイルス」「新型コロナウイルス感染症」の名称を用いる)。

 新型コロナウイルスはその後、遺伝子の変異によりヒトに対する感染に大きな影響を与えるような懸念が生じた場合に、WHOがギリシア文字を使ってそれぞれの変異株に呼称を付す(ラベルする)ことになった。アルファ(α)株は2020年9月にイギリスで最初に確認された変異株である。その後、2020年5月に南アフリカで確認された、伝播性や重症度を高める可能性のある変異ウイルスはベータ(β)株とよばれた。さらに、2020年10月にインドで確認され、デルタ(δ)株とよばれたウイルスでは重症度が高まり、世界中で多くの死亡者が出た。その後、ラムダ(λ)株、ミュー(μ)株がラベルされたが、いくつかのギリシア文字は使用されず、2021年11月に南アフリカ等で最初に確認された変異株はオミクロン(ο)株とされた。今後も、伝播性や重症度に変化を及ぼすようなウイルス変異が起これば、WHOがラベルすることとなる。

[和田耕治 2024年3月19日]

感染者数と死亡者数

日本は2023年5月8日で全数調査を中止したが、この時点までに3380万2739人が感染者として報告され、死亡者数は7万4669人であった。2024年1月28日時点で、世界で報告されている感染者数は7億7000万人を超え、死者数は700万人を上回っている。なお、これらのデータは、各国の調査・報告が減っていることにより、実際よりも少なく見積もられていると考えられる。

 なお、イギリスにおけるヒトの血清を用いた抗体検査から、8~9割の人が感染したことによって高くなる抗体が確認された。つまり、ワクチン接種と感染による抗体を保持する人が多くを占めるようになったことで集団免疫とよばれる状態となり、以前のような急激な感染者の増加は起こらなくなってきた。

[和田耕治 2024年3月19日]

感染経路

感染経路としては、飛沫(ひまつ)感染、マイクロ飛沫(エアロゾル)感染、接触感染が考えられている。飛沫感染やマイクロ飛沫感染のように、人の発声や咳(せき)などで発せられる飛沫を吸い込むことでの感染が、接触感染よりも多いと考えられており、とくに「3密(密閉・密集・密接)」とよばれる場面では、そこに感染者がいた場合に、会話などで発生したマイクロ飛沫を他人が吸い込むことで感染するようなことがあったと考えられる。すなわち、イベントなど大きな声を出したり、換気が悪いところでは、感染が広がる可能性がある。マイクロ飛沫感染の対策として、室内の場合には換気を確保することが推奨される。

[和田耕治 2024年3月19日]

感染から発症まで

新型コロナウイルスは、発生当初、ウイルスを含んだ飛沫を体内に取り込んだ後、発症するまでの期間(潜伏期間)は1~12.5日間とされ、多くの感染者は4~5日後に発症していた。しかしながら、ウイルスの変異により発症までの潜伏期間はしだいに短くなり、オミクロン株が主流になってからは2~3日程度となった。ウイルスの体内での増加がより速くなったことが背景にある。

 新型コロナウイルス感染症に特徴的な点として、発症する直前の比較的元気なときから、会話などで生じる飛沫にウイルスが排出されていることがあげられる。発症前に気づかずに会食などで会話をして、同席者や同居者が感染するケースが多く報告された(こうして感染した集団は、当時「クラスター」とよばれた)。

 感染が判明した場合には、当初、自宅での療養やホテルなどを活用した療養施設への入所、医療機関への入院等により、感染を拡大させないための隔離措置が講じられたが、2023年5月8日以降は法的には隔離措置は不要となった。ウイルスの排出量は発症から日を追うごとに減り、8日程度経過すると、他者に感染させるウイルスの排出はなくなることが明らかになったこともあり、これを踏まえて、発症から5日程度はできるだけ外出や人に会うことを避けるのが望ましく、その後も咳が出る場合には数日はマスクを装着することで周囲への感染を防ぐことになる。

[和田耕治 2024年3月19日]

症状と経過

症状は感冒(かぜ)と似ており、発熱、咳、咽頭(いんとう)痛、鼻水、倦怠(けんたい)感、下痢から始まる。これらの症状が一つであったり、複数であったりさまざまである。当初は味覚障害や嗅覚(きゅうかく)障害などを伴うことがあったが、オミクロン株の流行となってからは頻度としては低下している。

 感染しても無症状や軽い症状の人もいれば、発熱や咽頭痛が数日続く人もいる。基礎疾患のない健康な人であれば、ウイルスの変異とともに入院や死亡のリスクは小さくなっており、若年世代では対症療法のみで自然経過で軽快することが多い。しかし高齢者や基礎疾患を有する人においては、重症化のリスクがインフルエンザと比較しても高く、感染をきっかけに入院となったり、介護度が進んだり、死亡することもある。

 なお、回復後にも1割程度の人に後遺症が残ることが知られており、倦怠感や長引く咳などの症状が報告されている。また、複数回の感染により他の疾患のリスクも高まるという報告が海外でなされている。

[和田耕治 2024年3月19日]

診断

診断のための検査として、PCR検査、抗原定量検査、抗原定性検査などが行われている。医療機関で行われるだけでなく、感染拡大を受けて薬局などでも検査用キットが売られるようになったが、一般の人(非医療従事者)が正しく使用できているか、また検査自体の精度管理などが課題となっている。

[和田耕治 2024年3月19日]

検査

新型コロナウイルス感染症はきわめて多彩な臨床症状を呈するため、確定診断は現時点でPCR検査や抗原検査に頼らざるをえない。2020年前半の流行初期には診断の確定に抗体検査が有意義であるかのような情報が流れ、医療現場が混乱に陥った経緯がある。簡単にいえば、抗体検査は血中の抗体を調べるものである。たとえば、ある一個人が細菌やウイルスによる初めての感染症(新興感染症)に罹患(りかん)したとする。体内では初期に高感度型の免疫グロブリンIgMが産生され、この情報が免疫組織に受け渡され、IgGの上昇により感染が抑え込まれる。この場合、IgGは中和抗体に相当する。つまり、これはあくまでも新型コロナウイルスに限らない新興感染症に対する免疫反応であり、IgG上昇の反応があったとしても新型コロナウイルス感染症を特異的に証明するものではない。そのため抗体検査による結果の解釈について、医療現場に混乱を生じさせる結果となってしまった。

 次に登場したのが、抗原検査である。この場合の抗原は新型コロナウイルスの構造物(スパイクタンパクやコアタンパク)であり、これらを免疫学的に認識する検査である。ただし、検査した時点で新型コロナウイルスによる感染が成立していなければ陽性になりにくいため、感度の悪い検査と理解される結果となった(感度:70~80%)。すなわち、感染成立時には感度の高い検査であるが、キャリアとよばれる無症状の感染者をみつけるには感度の悪い検査と考えられてしまった。ただし、新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者を受け入れる際の検査としては、迅速に行いうるメリットがあり、きわめて重要である。

 一方、PCR検査は新型コロナウイルスの遺伝子断片を数億倍にも増やして、ウイルスの有無を確認する方法である。条件によっては偽陽性の可能性もあるが、上気道にウイルスは存在するが症状のないキャリア感染者をみつけるにはこの方法しか考えられない(感度:ほぼ100%)。

 現在、新型コロナウイルス感染症のスクリーニングはPCR検査と抗原検査が組み合わされ、検査の精度をあげている。また、新型コロナウイルスは変異という方法でどんどん進化し、感染力をあげていく。変異をみつけるためにはより高機能なPCR検査機器あるいはPCRにかわる検査機器の登場に頼らざるをえないが、2023年11月時点では、高度な遺伝子解析を行う以外に有効な手だてがないのが現状である。

[桑尾定仁 2021年12月14日]

治療・ワクチン接種

2023年10月現在、国内における新型コロナウイルス感染症の治療薬としては「ニルマトレルビル・リトナビル」「レムデシビル」「モルヌピラビル」「エンシトレルビル」などが選択肢としてあげられる。

 他方、新型コロナウイルス感染症に有効性を示すワクチン(mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチンなど)も開発されてきた。ワクチン接種によって重症化や死亡を予防することが確認されているが、新たな変異ウイルスが出現した際には効果が下がることや、接種後に時間が経つと中和抗体が低下することがわかっている。重症化を予防する効果は半年~1年程度は維持されると考えられるが、高齢者や基礎疾患治療中の人ではより短い可能性があるほか、個人差もある。今後、日本では重症化リスクの高い人は1年程度の間隔で接種を行うことが予定されている。

[和田耕治 2024年3月19日]

今後の見通し

新型コロナウイルスは世界中に広がっており、偶発的にさらに変異したウイルスが現れる可能性がある。イヌやネコなどの身近な動物だけでなく、さまざまな動物に感染することも示されており、今後においてもウイルスのゲノムを調べるなどの警戒は必要である。感染の経験やワクチン接種により免疫を獲得することで、感染者が急激に増加し、医療が逼迫(ひっぱく)するという事態は世界では減ってきているが、日本国内においてはまだ感染していない人も一定数いることから、今後も地域での感染拡大がありうる。ワクチンと治療薬が開発されたこともあり、死亡や重症化のリスクを下げる方策は得られたものの、変異したウイルスには免疫が十分に対応できず複数回感染することや、複数回感染することによりその後に別の疾患を発症する可能性が高まるという報告もある。したがって、できるだけ感染しないよう、引き続き、感染者が多い時期には感染対策を継続したい。

[和田耕治 2024年3月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

新型コロナウイルス感染症
しんがたコロナウイルスかんせんしょう

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