改訂新版 世界大百科事典 「土地分類」の意味・わかりやすい解説
土地分類 (とちぶんるい)
land classification
土地をその等質性に基づいて区分すること。1930年ころから欧米を中心に土地の自然的生産力の差異に着目し,それに基づいて合理的な土地利用を行うことについて必要性が生じ関心が向けられるようになり,以来,農学者や地理学者によって区分方法が考えられてきた。土地分類は一つの指標あるいは複数の組合せによる指標を用い,その等質性によって土地単位を設定し,成果は具体的には地図上に表現し,土地単位の内容が分類体系に基づいて解説されることが必要である。
土地利用の現況による土地分類は,最も基本的な資料の一つであり,1930年代にイギリスの地理学者D.スタンプの提唱によりイギリス全土にわたって実施され,縮尺が1:63360の地形図を基図に土地利用図がつくられた。日本では,53年以降行われている国土調査法に基づく土地分類基本調査において,地形分類,表層地質,土壌分類の三つの指標が個別に採用され,5万分の1地形図を基図にそれぞれの成果図がつくられてきている。これらの指標は土地の自然的属性であり,土地分類の目標としては,これらが別々に示されるのではなく総合的に表示され評価しやすい形で示されなくてはならない。個々の属性を指標とする土地分類としては従来からある地質図,植生図,気候図,水文図なども広い意味では含まれる。総合的指標を用いる土地分類にはドイツ地誌局の〈自然領域区分〉(縮尺20万分の1。1942-)やH.エレンブルクの〈植物立地図〉(1950),オーストラリア土地研究調査部の〈ランドシステム図〉(縮尺50万分の1。1958-),日本の農林水産技術会議の〈土地利用区分のための土地分類〉(縮尺2.5万分の1。1960)がみられる。これらは二つ以上の自然要素を組み合わせて指標とするもので,例えば気候区と地形分類と土壌分類の三つの指標の掛合せによる自然的立地単位(農林水産技術会議),気候区,傾斜,土壌,微気候を組み合わせた立地単位(エレンブルク),地質,地形,土壌,植生,水文を組み合わせたランドシステムの考え方などがある。
土地分級は土地分類の結果を土地評価の観点から階級区分することである。つまり土地分級は〈評価のための土地分類land classification for evaluation〉であり,上記の技術会議の報告書の中で定義された。土地評価はユーザーの立場によって異なるが,ふつう階級数はさほど多くしない。スタンプは耕地・牧草地としての優劣に従い10階級に評価した。また技術会議の場合は,耕地・草地・林地別にそれぞれの適正度を5階級に分けて評価している。
執筆者:式 正英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報