土居健郎(読み)どいたけお

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土居健郎」の意味・わかりやすい解説

土居健郎
どいたけお

[生]1920.3.17. 東京,東京
[没]2009.7.5. 東京
精神医学者。1942年東京帝国大学医学部を卒業後,聖路加国際病院に勤務。1950年にアメリカ合衆国のメニンガー精神医学校へ留学。帰国後は聖路加国際病院精神科医長を経て,東京大学医学部教授,国際基督教大学教授,国立精神衛生研究所所長などを歴任した。日本特有の他者への依存感情「甘え」を手がかりに日本人の特性を分析。1971年に刊行した『「甘え」の構造』では,他人に依存的で,依存を拒否されるとすねる,ひがむなどの屈折した態度をとる日本人の精神構造の基底には甘えがあると指摘した。同書は 120万部をこえるベストセラーとなり,日本人論ブームのきっかけともなった。英語,フランス語,中国語などにも翻訳され,「甘え」の概念社会学文化人類学にも影響を与え,国際的な学術語となった。

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百科事典マイペディア 「土居健郎」の意味・わかりやすい解説

土居健郎【どいたけお】

精神科医。東京都生れ。東京帝国大学(現,東京大学)医学部卒業。聖路加(せいろか)国際病院精神科医長,東京大学医学部教授,国際基督教大学教授,国立精神衛生研究所所長などを務めた。精神分析など専門分野の研究を踏まえた著作多数発表し,なかでも1971年に出版されベストセラーとなった《「甘え」の構造》は,〈甘え〉をキーワードとして日本人の精神構造を解き明かしており,代表的な日本人論の一つとされている。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「土居健郎」の解説

土居健郎 どい-たけお

1920-2009 昭和-平成時代の精神医学者。
大正9年3月17日生まれ。昭和25年アメリカのメニンガー精神医学校に留学。46年東大教授となる。のち国際基督教大教授をへて,58年国立精神衛生研究所長。日本人の心理特性として「甘え」の概念を精神分析に導入,「甘えの構造」はベストセラーとなった。平成16年日本精神衛生学会に土居健郎記念賞が設置された。平成21年7月5日死去。89歳。東京出身。東京帝大卒。著作に「精神分析と精神病理」など。

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世界大百科事典(旧版)内の土居健郎の言及

【甘え】より

…精神医学者土居健郎(1920‐ )がアメリカ留学の文化衝撃の中から日本語特有のものとしてとり出し,日本人の心理の特性と深い関係があることを見いだした言葉。彼は甘えを鍵概念として日本人の人格構造を理解し,さまざまな精神病理を考察し,日本の文化と社会の特徴および現代日本の社会病理を鋭く分析した。…

【精神分析】より

…正統的精神分析療法を習得し,これを広めたのは,丸井の門下で,1年間ウィーン精神分析研究所に留学した古沢平作である。今日,精神分析学界における指導的立場にある多くの学者は,戦後ひとしく古沢の教育分析を受けた人々であり,近年独自の〈甘え〉理論を提唱した土居健郎もその一人である。【下坂 幸三】
【精神分析と現代思想】
 フロイトによる無意識の領野の発見は,単に心的機制の理論や神経症の治療の問題にとどまらぬ広範な影響をもたらした。…

【日本社会論】より

…この志向傾向を〈個別・状況主義〉と呼ぶならば,そうした状況倫理こそ,日本の文化型の基体を成すものであるといえよう。
[〈甘え〉の意味]
 日本人の国民性または民族的性格については,〈甘え〉という分析概念でもって論じた精神医学者,土居健郎の理論が有名である。土居によれば,〈甘え〉は日本語にしかない語彙(ごい)であって,他者に対する依存欲求,ないし相手との一体化の願望を指している。…

※「土居健郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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